米国での販売競争激化により経営環境が悪化している自動車メーカーだが、2025年1月20日に就任する米トランプ大統領の政策がさらなる逆風となる可能性がある。特集『総予測2025』の本稿では、日系各社に襲う逆風について明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
米国で自動車の販売競争激化
値引きで顧客を囲い込み
円安ドル高による為替差益やハイブリッド車(HV)人気を受けて2024年3月期は過去最高の業績を相次いで更新していた自動車メーカーだが、ここにきて各社を取り巻く経営環境が厳しさを増している。
背景にあるのが米国での販売競争激化だ。新型コロナウイルス禍以降、半導体不足によるクルマ不足によって需要と供給のバランスが崩れた。米国では造れば勝手に売れていた。
ただ、クルマの供給が需要を満たすようになると販売競争が激化。販売奨励金を積み増して、値引きで顧客を囲い込む状況になっている。
販売競争のあおりを最も受けたのが日産自動車だ。トヨタ自動車やホンダと比べてスポーツタイプ多目的車(SUV)「ローグ」(日本ではエクストレイルとして販売)が伸び悩み、24年9月中間決算の営業利益は前年同期比90.2%減の329億円だった。
米国における日産の販売台数は前年同期比2.7%減だった。値引き販売してこの実績なので、実際の販売環境はかなり厳しいとみられる。日系主要5社の中では、SUBARUも販売が鈍化し、3.1%減となった。一方、トヨタはHVの人気もあり、0.4%増と実力を見せつけた。
トヨタの宮崎洋一副社長は、米国で各社の販売奨励金が増加している点に関して、「いくばくか追随しないと顧客に選ばれないのでバランスを取りながら進めていくが、今後市場がわれわれの想定通りに推移するなら、販売奨励金を抑制できる」と強気の姿勢を示す。
ただ、25年に押し寄せる逆風は、販売競争だけではない。1月20日に就任するトランプ大統領の政策によっては「ドル箱」だった米国事業の業績が急降下する恐れがあるのだ。
次ページでは、日系自動車各社に襲う逆風の正体を明らかにする。その一つが米国の関税率アップのリスク。リスクはほかにもある。これらのリスクの影響を受けやすい自動車メーカーを解明する。