「食後の血糖値」が体に及ぼす影響

 食後の血糖値については興味深い論文があります。ヨーロッパの2万人の市民に行われたDECODE試験では、「食後の血糖値」と「空腹時の血糖値」とを比べた結果、「空腹時の血糖値が高い」ことより、「食後の血糖値が高い」ほうが病気や死亡のリスクが高まることがわかりました(※3)

 また日本でも、山形県の舟ふな形がた町の約3000人の住民を対象にした研究では、空腹時の血糖値と心臓病のリスクとの関係は証明できませんでしたが、食後の高血糖は心臓病のリスクと明確に関連していることが示されました(※4)

 このように「食後の高血糖は体によくない」というエビデンスが出ています。健康診断の採血検査では「空腹時」の血糖を測るのでこのリスクは見逃されやすいのです。空腹時血糖が正常なだけでは安心できません。

ドカ食い防止の具体的な方法

 ドカ食い防止のためには30回咀嚼法を試してみてください。咀嚼(食べ物を噛む)の回数を増やせば自然とドカ食いは防止できます。満腹感を感じやすくなり、食事の量が減る効果も期待できます(※5)。また5万7000人の日本人を対象にした研究でも、「ゆっくり食べる人は早食いの人よりメタボになりにくい」という結果が出ました(※6)。もし30回が難しくても、「継続できる範囲で噛む回数を決め、それを習慣づける」ことを目標にしましょう。

40歳からの絶対NG行動

 40歳を越えたら「食事は必ず完食しなければいけない」という思い込みを捨ててください。例えば、中華料理店でチャーハン定食を注文したとします。チャーハンの量が多く、まだ3分の1ほど残っているものの、もうお腹はいっぱいです。こういうとき、無理に完食しようとするのはやめましょう。食事量が多いと、血糖値は上がります。腹八分目のほうがいいです。

「お米には7人の神様がいる」といったような「ご飯を残すのは悪だ」といった教育を受けてきた人も少なくないと思います。しかし、神様もきっとあなたが食べすぎて生活習慣病になり寿命が縮まることを望んでいないでしょう。

【出典】

※1 Minoru Satoh,et al. NAD(P)H oxidase and uncoupled nitric oxide synthase are major sources of glomerular superoxide in rats with experimental diabetic nephropathy.Am J Physiol Renal Physiol. 2005 Jun;288(6):F1144 52.
※2 I Fridovich. Superoxide anion radical(O2--.), superoxide dismutases, and related matters. J Biol Chem. 1997 Jul 25;272(30):18515 7.
※3 DECODE Study Group, the European Diabetes Epidemiology Group. Glucose tolerance and cardiovascular mortality: comparison of fasting and 2 hour diagnostic criterio.Arch Intern Med. 2001 Feb 12;161(3):397 405.
※4 Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, Igarashi K, Kato T, Sekikawa A Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose. The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care 1999; 22: 920 924.
※5 Jie Li,et al. Impro vement in chewing activity reduces energy intake in one meal and modulates plasma gut hormone concentrations in obese and lean young Chinese men. Am J Clin Nutr. 2011 Sep;94(3):709 16.
※6 Satsue Nagahama,et al. Self reported eating rate and metabolic synd rome in Japanese people: cross sectional study. BMJ Open. 2014 Sep 5;4(9):e005241.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を抜粋・編集したものです)