今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【金融市場の公然の秘密】バフェットに反旗を翻した投資会社の残酷な末路・ワースト1Photo: Adobe Stock

バフェットの呼びかけに挑戦した投資会社とは?

2000年代後半、バークシャー・ハサウェイの年次総会で、ウォーレン・バフェットは、
今後10年間、市場平均に連動するS&P500指数を上回る運用パフォーマンスを出すアクティブファンドはないだろう。もし上回るファンドがあるなら、100万ドルを賭けてもいい
と申し出た。

プロテジェ・パートナーズという投資会社がバフェットの賭けに乗った。
プロテジェは5つのアクティブファンドを選び、その10年間でパフォーマンスの低いファンドを、成功する可能性が高いと思われるファンドといくつか入れ替えながら運用した。

1年目、5つのアクティブファンドのパフォーマンスは、いずれもS&P500を大幅に上回った。

翌2009年はS&P500の勝ち。
2010年、2011年、それ以降もずっとS&P500が勝ち続けた。

2017年時点でS&P500のリターンは126%に達した。
プロテジェ・パートナーズのリターンは?

わずか36%。
賭けは2017年12月31日に公式に終了したが、その年の夏までにバフェットがはるかにリードしていたので、プロテジェは早々に負けを認めた。

金融市場における公然の秘密

このバフェットの物語は、ウォール街の金融業界が世間に知られたくないものだ。

なぜなら、一貫して市場に勝ち続けられるファンドはほとんどいない(仮にいたとしても)ことを一般の投資家に気づかれたら、株式ブローカーやヘッジファンド・マネジャー、投資アドバイザーが大量に失業することになるからだ。

これは金融市場における公然の秘密だ。

どれだけ金融の知識があり、資本やスタッフが充実していても、長期的には誰も市場平均には勝てない。

たしかに、短期的には市場平均を上回るパフォーマンスを出すことは可能だ。
2021年には、まさにそれが起こった。

暗号資産やミーム株〔訳注:SNSなどで大きな話題になり、急騰した株〕に投資し、市場平均より桁違いに大きく資産を増やした人がたくさんいた。
私の11歳の息子も見事にドージコインを買っていた。

だが、良いときは長くは続かなかった。
2022年には、暗号資産トレーダーの4人に3人が初期投資で損失を出した。

一方、投機資産が暴落する中、株式市場は着々と上がり続けていた。
私の(あるいはバフェットの)言葉を鵜呑みにせず、データにも目を向けて確かめてほしい。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)