腕組みをするビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

自社の魅力を伝えるためにSNSの運用に踏み切った経営者は「成功話」や「自慢話」を語りがちだ。しかし、これまで30社以上の企業の発信をサポートしてきた竹村俊助氏は、自慢話だけでは読者からの“共感”は得られず推される企業になれない、と指摘する。経営者が発信する際の注意点について解説する。※本稿は、竹村俊助氏『社長の言葉はなぜ届かないのか?経営者のための情報発信入門』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。

成功話や自慢話は嫌われる
苦労話や失敗話を発信すべし

 企業として発信しようとすると、つい「成功話」を語りがちになります。

「会社設立以来、順調に成長し、顧客もこれだけ増え、○年後に上場も果たしました!」

 こういった記事もたまに見かけますが、これだけだとただの自慢に見えてしまって、読者はあまり魅力を感じません。下手をすると「なんだか偉そうだな」と、逆ブランディングになる危険性もあります。

 それよりも今の時代は、苦労話や失敗話を書くことをオススメします。

「会社を立ち上げたのはいいものの、お客さんは0人。しばらくはパチンコに通っていた」とか「順風満帆だったのに、不況のあおりで一度倒産しかかり、一時期はカップ麺ばかり食べていた」といった話です。苦労話、失敗話は多くの人が「自分ごと」にできるので、共感を得やすいのです。

 僕自身もSNSを眺めているときに「こんなにうまくいきました」という話よりも「会社が倒産して大変なことになりました」「社員が逃げちゃって1人になってしまいました」「借金を抱えて散々な目に遭いました」という話についつい目が行ってしまいます。人は他人の失敗から学びたいと思うもの。少し躊躇するかもしれませんが、恥を忍んで苦労話を書いてみてほしいと思います。

 たとえばこんなコンテンツは共感を呼びます。

「36歳で印刷会社の社長になった僕が、減り続ける売上をなんとか立て直した話」

 これはglassyという印刷会社の二代目社長の奮闘記です。メインクライアントだった家電量販店のチラシ発注がなくなりピンチになるものの、その後「社内報」の制作に舵を切り、復活を遂げたことが書かれています。

苦境を打破して軌道に乗るまでの
ストーリーが共感を得る

 もしこれが「社内報で儲かった話」だったら読んでもらえなかったでしょう。注文が減り続け、苦労した様子も描くことで多くの人の共感を呼ぶことができたのです。

P133図版同書より転載 拡大画像表示