社内の会議では「もう『ホンダやソニーを100社作る』という看板は下ろすか」という意見も出ました。そのとき僕は末席にいたのですが「それはやめてください!」と突然手を上げて言いました。「ホンダやソニーは大企業からでも生み出せます!きっとうまくいきますから!」と叫んだのです。

 なぜ、突然叫んだのかはわかりません。ただ「ドリームをインキュベートしなきゃ、うちらしくないだろう」と思ったのです。大企業であっても、もっともっと大きくなることはできるはず。ソニーやホンダ100社に匹敵するような大きなものを生み出せるはず。

 新規事業の案件で結果が出ているものは、まだありませんでした。それでも僕は続けて「情けないこと言わないでくださいよ。本気で看板を下ろすなら、僕辞めますからね!」と入社4年目の分際で偉そうに言いました。すると会社への想いの強い幹部が「ハッ」という顔をして、前につんのめった若造の僕にあたたかく「そうだよな、ちょっとがんばってみるか」と返してくれたのです。

NHK「プロジェクトX」のような
裏側のストーリーも効果的

 このやりとりをきっかけに大企業の新規事業のコンサルティングに舵を切り、やがてその「ビジネスプロデュース」は同社のメイン事業になり、見事V字回復を果たしたのです。

 うまくいっている現状だけを書くのではなく、それまでの経緯を書けば自然と「面白いコンテンツ」になります。どんな商品も、どんなサービスも、たった1人のお客さんから始まったはず。何もなかったところから、どうビジネスを作り上げていったのか?それを多くの人にシェアすることは人類を前に進めることにもなると思うのです。苦労話や失敗話も含めてぜひ書いてみてください。

「商品やサービスの誕生秘話」も需要の高いコンテンツです。

 たとえば「妻が『レシピサイトは見てて楽しくない』と言っていたので、レシピも動画にしようと思いついた」とか「急に親が亡くなってしまい実家の片付けが大変だった。それを代行するサービスができないかと思った」など、なるべく「個人のエピソード」にまで落とし込めると魅力的な話になります。

 裏側のストーリーが伝わるとモノやサービスに命が宿ります。

 イメージとしてはNHKの「プロジェクトX」で取り上げられそうなストーリーです。そしてここでも、発信の主体は経営者が望ましいです。もし商品の開発者のほうが詳しいなら「商品の開発者に経営者が話を聞いた」という切り口で経営者から発信することをオススメします。