未来のクルマの
新しい買い替え方

――でもそうなると、なかなか買い替えられなくなってしまいそうですが。

「新車に買い替えるときは、機種変更したスマホにアドレス帳などを移行するのと同じように、ユーザーのデータ履歴を移植すればいい。まだ妄想レベルの話ですが、自動運転車はそういう方向に進歩していくのかもしれません。単なる移動手段にとどまらない楽しさがないと、買ってもらえませんから」

 自動運転というテクノロジーの進歩に、心理学の果たす役割は大きそうだ。

 その一方では、「測定」についてのテクノロジーの進歩が、心理学の可能性を広げている面もあるようだ。

「センサーが小型化して、どこでも測定できるようになったのが大きいですね。2010年代になる頃までは心電計も巨大で私の背丈近くあったので、車載して公道で実験をおこなうことなどできませんでした。ステアリングに仕込めるぐらいのサイズになって、研究が大きく加速しました。

 いまは自動車にかぎらず、いろいろな場面で人間の感情を測れるので、研究者としては楽しくてしょうがないですよ。自分の子どもが生まれたときも、いい測定対象ができたとうれしくて、測りまくってました(笑)」

図8-3 コンパクトになった現在の測定器同書より転載 拡大画像表示

「快適」なのに「使いにくい」
人間心理の不思議

 木村さんは産総研の人間情報研究部門というセクションの仕事を兼務して、そちらでは家電製品の使い比べ実験もしている。