ガザの平和のために
イスラエルは消滅せよ!?
ガザでの停戦を求めてアメリカ中の大学でテントやバリケードが設営されています。警察がより強圧的に排除するようになり、それが抗議行動をより先鋭化させてもいます。この流れの中で「インティファーダ」や「川から海まで(from the river to the sea)」といったスローガンも度々叫ばれています。しかしこれらのスローガンには大きな問題があります。
まず「インティファーダ」とはパレスチナ民衆のイスラエルに対する抵抗運動を指しています。2024年5月11日、東京・渋谷でも「インティファーダ・マーチ」が開催されました。問題はアラビア語で「振り落とす」ことを意味する「インティファーダ」という語句です。
1980年代に起きた「第1次インティファーダ」には欧米の知識人も数多く賛同しましたが、2000年以降の「第2次インティファーダ」ではハマスなど過激派組織によるイスラエル市民を狙った自爆テロが頻発し、2001年のニューヨークなどへの「9・11同時多発テロ」とも重なりました。広義のパレスチナ解放を主張するスローガンとして「インティファーダ」はあまりにも据わりが悪い。
次に「川から海まで」ですが、これは「ヨルダン川から地中海まで」を意味し、ユダヤ人が入植する以前のパレスチナに戻すという意味合いを帯びています。つまりイスラエル国家の消滅、1948年に遡った歴史のやり直しです。
イスラエル人や多くのユダヤ系アメリカ人にとって、このスローガンはテロ容認に聞こえます。叫んでいる側のデモ参加者の中にはさまざまな考えの持ち主がおり、「パレスチナ全土から抑圧がなくなること、すなわちユダヤ人とパレスチナ人が共存すること」という意味合いで捉えている人もいれば、「植民地主義によって人工的に作り出されたユダヤ国家、イスラエルは存続が許されない」という人もいます。このスローガンも中東情勢そのもののねじれた複雑さを無視したものです。
ねじれた歴史のドミノの前に
上っ面だけの正義は無力
大学のキャンパスを占拠し、警察に強制的に排除されるまで立ち退かないという実力行使に及んでいる人たちは、おそらく一途に「私たちにできるあらゆる手段でガザ市民の虐殺を阻止する」という決意で抗議活動に参加している。そこまではわかります。