ちなみに私はGLAYのメンバーと同年代で、中学生の頃は、氷室氏がボーカルを務める伝説的バンドBOOWYの人気絶頂期だった。つまり、私もGLAYも、人生でもっとも多感な時期にBOOWYに出会ってしまった「BOOWY直撃世代」なわけだ。

 中学のヤンキーが書く落書きには高確率で「BOOWY」やそのバリエーション(要するに綴り間違い)が入っていたし、ロックとかにそれほど興味がなく、運動場の土と泥にまみれながら部活ばかりやっていた私ですら、BOOWYの楽曲とヴィジュアルには少なからず衝撃を受けた。

 だから、その後音楽を生業にしたGLAYがBOOWYならびに氷室氏から受けた影響の大きさは、察するに余りある。

氷室京介がTERUに放った
「俺はさ、いい声じゃないからさ」

 実際、上記の『Answer』は、氷室氏とTERUさんの双方の良さを最大限に引き出した素晴らしい曲で、長年にわたって氷室氏を見てきた人たちでないと作れないものだった。氷室氏と対談するTERUさんの様子からも、氷室氏への尊敬の念がひしひしと伝わってきた。

 しかし私は、画面のこちら側で両者の対談を見ながら、かなり緊張していた。先ほど私は氷室氏についてはあまりくわしくないと申し上げたが、とある面については、その対談を見ている時点ですでに人並み以上に知っていた。それは腕っぷしの強さ、つまり武勇伝方面である。

 吉田豪や浅草キッドなどの書き手による「有名人のコクのある話」が好きな私は、ヒムロックこと氷室氏についてのその手の話もしこたま仕入れていたのだ。氷室氏といえば、圧倒的な歌唱力とフィクションのような美しい容姿を併せ持つ稀有な人だが、ケンカの強さも有名だ。

 何せ、BOOWYを結成する前にヒムロックに呼び出された布袋寅泰が「殴られると思った」と証言するほどなのだ。あの布袋氏をそこまでビビらせるなんて、どれほど強い(そして怖い)のだろう。

 そしてそういう目で見ると、氷室氏がステージで見せる美しい動きやポーズも、まるで武術家の演舞のように見えてくるので不思議だ。月刊『秘伝』あたりで特集を組まれてもいいんじゃないかと思う。