「女の子はピンクが好き、男の子はブルーが好き」。これは実は、先進国社会の思い込みが作る、後天的な子どもの性差なのだという。発達心理学者である筆者が、色の好みに関する驚きの事実を紹介する。本稿は、森口佑介『つくられる子どもの性差 「女脳」「男脳」は存在しない』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
日本の未就学男児の好きな色
1位は青、2位は赤
子どもが好む色といえば、女児はピンク、男児は青、が一般的な見方でしょう。実際、欧米の子どものジェンダー論では、ピンクブレイン、ブルーブレインと言うなど、ピンクと青は子どもの性別の象徴になっています。しかし、子どもは本当にこのような色を好む傾向があるのでしょうか。
欧米諸国がリードする発達心理学の研究においても、女児がピンクを好み、男児が青を好むというのは、強い傾向として広く知られています。ここでは、学研教育総合研究所が出している2022年の幼児白書Web版と2018年の小学校白書Web版を基に、日本人の子どもの傾向を見ていきましょう。
幼児は対象が1200人、小学生も対象が1200人という、それなりの規模の研究です。まず幼児について見てみると、女児においては、最も好きな色はピンクであり、4歳から6歳の子どもの約80%が好きな色として挙げています。2番目に人気のある色は年齢で異なり、4歳では赤色、5歳と6歳では紫色が挙げられ、水色なども人気があるようです。
一方男児においては、最も好きな色は青色であり、4歳から6歳の子どもの約半数が選んでいます。興味深いのは、2番目に好きな色はいずれの年齢も赤色であることです。つまり、男児が赤いランドセルを選ぶのは全く不思議ではないわけです。また、男児ではピンクの人気はかなり低いことも示されています。
女児は大きくなるにつれ
ピンクが好きではなくなる
次に、小学生を見てみると、女児のピンクの人気が年齢によって変わっていくさまが興味深いです。ピンクが人気なのは間違いないのですが、4年生や5年生では、水色にトップの座を奪われています。また、小学校1年生の女児の約66%がピンクを好きな色として挙げるのに対して、2~3年生で5割程度に減り、4年生になると4割程度になり、5~6年生では4割を切ってしまいます。