いくつかの考えを紹介しましょう。1つは生物学的な話で、私たちの色を知覚する視覚システムに性差があるという説です。色の見え方には性差があり、その違いによって色の好みが異なってくるという考え方です。もう1つは、性差を説明するためによく使われる進化論的な話で、女性がピンク色を好むのは、赤い果物を探す狩猟採集時代の名残という説です。
つまり、狩猟採集時代には採集を女性が担っており、赤い果物を探すことのできる女性のほうが生存に有利だったという考えです。
また、健康な配偶者を選ぶ助けになったという説があります。女性がピンク色を好むのは、健康な男性パートナーを選ぶうえで役立つ適応であったからではないかということです。つまり、赤みを帯びた男性の顔色が、健康や活力を表すシグナルとなり、そうした色を好むようになった、という考えです。
子ども服が示す
文化的メッセージ
一見もっともらしいですが、最近ではたとえば採集を女性が担っていたという前提そのものが疑問視されています。また、女児がピンクを好むことを説明しようとする理論はあるものの、男児が青色を好むことを説明できません。
このことから、環境や生まれてからの経験を重視する考えが提案されています。たとえば、子どもの色の好みは、ピンク色が女性的であるという社会的・文化的メッセージによって形成されるという考え方があります。おもちゃの広告やメディアの情報などから、「ピンク=女性」というつながりを認知し、その通りの振る舞いをするようになるのではないかというものです。
確かに、子どもの洋服売り場に行ってみても、服の色には顕著に色の違いが見られます。女児の服はピンクや水色、紫色が並ぶのに対して、男児の服は黒や青が並んでいます。多様性を重んじるはずのグローバル企業においても、この傾向は未だになくなっていないように思われます。
色の好みは
“文化”で変わる!?
ここで、どのような文化や地域の子どもにも同じような色の好みがあるのかを検討した研究を紹介しましょう。具体的には、ペルーのアマゾン地域に存在する村の子ども、バヌアツ共和国のタンナ島の高地に位置する村の子ども、コンゴ共和国北部地域に居住する狩猟採集を生活様式とする民族の子ども、そしてオーストラリアの都市部に住む子どもを対象に検討した調査です。