もし色の好みが生まれつきだという考えが正しければ、おそらくどのような国や文化で生まれた女児も、ピンクを好むはずです。一方、経験や環境が大事なのであれば、都市部に住む子どもでは色の性差が見られ、それ以外の子どもではその傾向が弱くなるはずです。

 これらの文化の4歳から11歳の子どもを対象に、青とピンクのペアを提示して、どちらの色が好きかを尋ねました。また、ピンクだけに限定されるかを調べるため、青と赤のペアや、ピンクとペールブルー(明るい青)も提示しました。

 その結果、まず、赤と青や、ピンクとペールブルーでは、性差が見られませんでした。性差が見られたのはピンクと青のペアだけ、しかもその性差は都市部に住む子どものみで見られました。つまり、都市部の子どもでは、ピンクを選ぶ傾向に性差が見られたのです。ペルーの子ども、バヌアツ共和国の子ども、コンゴ共和国の子どもではその傾向が見られませんでした。

 この研究では、都市部に住む子どもで見られる性差が、興味深い形になっています。性差があった場合、実は結果に2つの方向性があります。1つは女児がピンクを好むという方向性、そしてもう1つは、男児がピンクを避けるという方向性です。

 この研究では、都市部に住む子どもでは、女児がピンクを好むというよりは、男児がピンクを避けるという結果でした。私もかつて男児であったことから、「ピンクなんて」というようなこの気持ちは理解できます(今はピンクのシャツを着たりしていますが)。

 この研究結果を見てみると、すべての文化や地域でピンクを好んだり、避けたりする傾向はなさそうです。乳児期にはピンク色の好みが見られないという結果が多いことも踏まえると、色の好みについては、生まれつきというよりは環境や経験の影響が大きいという結論のほうが妥当のように思えます。