食養生のなかに、食材を五つに分類し、それぞれ味の性質を生かして調理するという方法があります。
「陰陽五行」という中国古代の哲学思想は、自然界に存在するあらゆるものを五つに分類し、その5種類の間はお互いに関連していると考えます。その五つとは〈木、火、土、金、水〉です。
味もこれに相応して「五味」とし、木=春=酸味、火=夏=苦味、土=梅雨=甘味、金=秋=辛味、水=冬=塩辛味となっています。五つに分類した味にはそれぞれ働きがあり、酸味は収斂(出過ぎるものを抑える)・生津(体液を生じさせる)、苦味は瀉下(便の排出)・燥湿(余分な水分を出す)、甘味は補益(体を補って守る)・止痛(痛みを止める)、辛味は散寒(寒さを散らす)・行気(気を巡らせる)・活血(血を巡らせる)、塩辛味は軟堅(固いものを軟らかくする)・瀉下(便の排出)などの作用があります。
また、食材の性質は、〈寒、涼、平、温、熱〉という五つの性質に分けられ、これを「五性」といいます。例えば、寒性や涼性の食材を取ることによって体の熱を取ったり、温性や熱性の性質を持つ食材で体を温めたりすることができます。平性は温めも冷ましもしない性質です。
この五味と五性を知ることで、その食材の効果・効能がわかります。そして、その特徴を季節ごとに料理の味付けに生かすようにします。
初夏に当たる5月は、爽やかな季節とはいえ、時には暑い日もあります。この時期は五味のなかで酸味と苦味のものを少量取り入れるとよいでしょう。日差しも強まってきますが、紫外線対策としてはビタミンCを取ることが有効です。
酸味のある果物や、ほろ苦い味わいのグリーンアスパラガスなど旬の食材がお薦めです。暑い日には涼性のミントと平性のレモンを組み合わせた飲み物や、涼性の緑茶にレモンなどを加えるのもいいでしょう(緑茶は苦味があり、体の熱を出します)。汗をかき過ぎるときは、酸味のある柑橘類、キウイ、五味茶などを取ると多少は抑えられます。
ひと口大に切ったトマトと豆腐をだしで煮て、酒、醤油、みりんで調味した煮物、グリーンアスパラガスとイカの酢味噌あえ、セロリとタコのキュウリドレッシングあえなど。