2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「どうしたら喜んでもらえるか」を考えると商売はうまくいく

 私は、いちばん多いときで、年間に330回ほどの講演会と、トラベルライター(旅行作家)の仕事をしていましたが、もし体がたくさんあったとしたら、自分の分身にやらせたいことが「3つ」あります。

 ひとつ目は、喫茶店の経営。2つ目は、クリーニング店の経営。3つ目は、ホテルの経営。

 まず、ひとつ目の「喫茶店」についてです。日本には、環境省が定めた「名水百選」があります。この100名水をすべて飲んだ人は少ないと思います。30年間、トラベルライターをしている私でも、まだ半分くらいしか飲めていません。

 私が喫茶店をはじめるのであれば、半年くらいかけて100名水の源泉を訪ね歩き、源泉からいちばん近い農家を探します。そして、「電話1本かければ、ポリタンクで水を送ってもらえる」ようにお願いをしておきます。

 それから喫茶店をオープンするのです。

「今週は、白山の名水でコーヒーを淹れます」「翌週は羊蹄山のふもとの名水でコーヒーを淹れます」「次の週は青森のブナ林の湧き水でコーヒーを淹れます」……といったように続けていけば、2年で100名水のすべてを飲むことができます。

 このような喫茶店がわが家の近くにできたら、悔しいけれど、私は100週、通い続けてしまうことでしょう。

 クリーニング店の経営をはじめるときは、事前に「1万種類、10万点」のボタンを買って、「ボタンの部屋」をつくっておくようにします。

 そして、ボタンの取れているワイシャツやブラウスを預かったら、「1万種類、10万点」の中から同じボタンを見つけて、黙って付けておくのです。

 お客様が不思議な顔をして、「おたくにクリーニングを頼むと、ボタンが付いて戻ってくることがある」と声をかけてきたら、私は、フッフッと笑いながら、「ボタンの部屋」に案内します。その人が、「ワーッ」と驚く顔を見てみたいからです。

「あのクリーニング店にお願いすると、ボタンが取れていても、新しいボタンを付けてくれる」という評判が広がれば、頼まれる洋服の数が増えるかもしれません。

 ホテルを経営するなら、10室くらいしかない小さなホテルを経営したいと思います。そして部屋に名前をつけていきます。

「西遊記」になぞらえて、ひとつ目の部屋を「長安」、2つ目の部屋を「蘭州」、3つ目の部屋を「敦煌」、4つ目の部屋を「トルファン」……、「バーミヤン」「ガンダーラ」と名付け、10室目を「天竺」にします。

 はじめてこのホテルに宿泊した人は、「長安」に泊まっていただきます。2回目に来た人は「蘭州」に泊まっていただきます。3回目のお客様は、「敦煌」に泊まれます。

 こうしたホテルがあったら、「旅心」が刺激されるのではないでしょうか。私なら、どうしても「天竺」まで行ってみたいと思います。

 さらに、「敦煌」という名前の部屋には、「石窟があって、壁に開けられた穴を覗くと仏像が彫られている」とか、「タクラマカン砂漠」という部屋をつくっておいて、部屋に入ると砂が敷き詰めてある、といった趣向を凝らすとおもしろいと思います。

 喫茶店も、クリーニング店も、ホテルも、私が考えているのは「どうやったら売上が上がるか」ではありません。「どうしたら喜んでもらえるか」を考えると、結果的に商売はうまくいくらしい。どうも、宇宙の構造はそうなっているようです。