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DRAMの終焉――消えないメモリがもたらす大変化

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第3回】 2013年5月9日
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 ただし、半導体チップの面積を広くすると生産量が落ちますし、歩留まりも悪くなります。つまり低価格化が進みにくくなります。このため(2)の半導体微細化によって、メモリ容量を増やすことになります。ここで問題は微細化するとキャパシタも小さくなり、そうなるとキャパシタに貯められる電荷量も少なくなってしまいます。そうなると電荷を補充するための電力供給の間隔がさらに短くなり、コンピュータの消費電力が増えます。

 さらに電荷量が少なすぎてキャパシタ内に情報を維持することも難しくなってきます。最新のDRAMでは、平面的には半導体を微細化させる一方で、縦方向にキャパシタ部分を伸ばす(わかりやすくいうと狭い面積に高層ビルを建てるような状況)ことで、キャパシタに貯められる電荷量を稼いでいるのですが、それにも限界があるということです。

不揮発性メモリが次世代メモリ技術として
有力視される理由

 いま留意すべき状況は、コンピュータで広く利用されているDRAMには、技術的な限界が迫っており、将来的に記憶容量を増やすことが困難になりつつあるということです。

 これまでもDRAMの大容量化、つまり半導体微細化の限界説が流れたことはありました。しかし、半導体業界はそれを克服して、DRAMの記憶容量を増やしてきました。このため、限界説は「狼少年」化している部分がありますが、今回の限界説はちょっと状況が違います。

 いままでの限界説は半導体の微細化そのものの限界でしたが、今回はDRAM内部において、情報を保持するための電荷量が少なくなってしまうというDRAMの基本メカニズムそのものに関わる問題であることと、DRAMチップを積層化させる技術(3Dスタッキング)などは提案されているものの抜本的な解決とはいいにくい状況です。今回は何よりも当のDRAMベンダー自身が、DRAM代替候補として、不揮発性メモリを中心に次世代メモリ技術の研究開発を活発化させています。

 DRAMに限界が訪れた場合、DRAMに代わる、新しいメモリ技術が必要となります。その最有力候補として注目されているのが、不揮発性メモリ(Non-volatile memory)です。不揮発性メモリは文字通り、電源を切っても情報が消えないメモリのことですが、その中でもDRAM代替として有力視されているのはMRAM(磁気抵抗RAM)とReRAM(抵抗変化型メモリ)などの技術です(STT-MRAMやPCRAM、FeRAMなど、他にも有力視される不揮発性メモリはありますが、今回はメモリ技術の解説ではなく、その影響についての解説なので割愛します。本稿では、STT-MRAMはMRAMと区別せずに、MRAMと表記しています)。

 MRAMやReRAMは情報を電荷ではなく、抵抗値を変化させることで保持します。このため半導体回路を微細化しても、DRAMのように電荷量不足の問題は起きません。10ナノメートル以下のプロセスの微細化にも対応できるといわれています。MRAMやReRAMは記憶回路は比較的単純なのでDRAM並に大容量化もできるとされ、読み書き性能もそこそこ高速なので、今後、DRAM代替となる次世代メモリとして期待されています。

 なお、SDカードなどにも使われるフラッシュメモリも不揮発性大容量メモリですが、読み書きが遅いのでDRAMの置き換えは難しい。また、キャッシュなどではSRAMと呼ばれるメモリが利用されます。リフレッシュ電流が不要なので、消費電力は減らせますが、メモリ回路が複雑なために大容量化が難しいのが現実です。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

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分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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