マイクロソフトやMetaの動向

 さて、市場調査会社のH&I Global Researchによると、2022年の空間コンピューティング関連市場の規模は約1025億ドルと評価され、2030年までに年平均20.4%の成長率で拡大すると予測されている

 そう言われてもピンと来ないのは、やはりスマートフォンやスマートウォッチなどと比べて、実際に空間コンピュータと呼べる製品を街中などで見かける機会が圧倒的に少ないからだろう。確かに屋外でApple Vision Proを使うユーザーはいても少数であり、筆者も含めて大半は屋内のみで使用している(Appleもそう推奨している)ため、まず目につくことがない。

 しかし、一般的な認知度は低いとはいえ、以前からマイクロソフトは医療や製造業などのエンタープライズ向けソリューションとして「HoloLens」(ホロレンズ)というMR(複合現実)ヘッドセットを開発・販売していた。同製品は2024年10月に生産終了したものの、軍事用製品としての開発が続けられている。また、同社はMetaのQuestシリーズをWindows PCの拡張ディスプレイとして利用するための機能もリリース予定であり、サムスンと提携して新たなMRヘッドセットの開発を検討中との噂もある。

単体で機能するMicrosoftのHoloLensはゴーグル型に近い形状だが、パススルー映像ではない実際の情景にコンピュータが生成したグラフィックスを重ねて表示するスマートグラスに近い成り立ちの製品であったマイクロソフトのHoloLens(ホロレンズ)は単体で動作する。ゴーグル型に近い形状だが、パススルー映像ではない実際の情景にコンピュータが生成したグラフィックスを重ねて表示する、スマートグラスに近い成り立ちの製品であった Photo: Microsoft

 一方で、メタバース推進のために社名変更までしたMetaも、思うように定着していない仮想空間事業より、最近はQuestシリーズを使った広義の空間エンターテイメントや、スマートグラスのOrionプロトタイプに象徴される空間コンピューティング系技術に力を入れてきている。同社にとっては、現実空間におけるユーザーの視線移動情報まで収集可能なスマートグラスのほうが、自社のビジネスにとって有利だと考えたとしても不思議ではない。

Questシリーズの最上位モデルとして、Microsoft 365も利用できるなど、ビジネス用途も意識したMeta Quest ProQuestシリーズの最上位モデルとして、Microsoft 365も利用できるなど、ビジネス用途も意識した「Meta Quest Pro」 Photo:Meta 拡大画像表示
やや縁が太めのメガネ程度のフォームファクターで、半透過イメージを現実の情景に重ねて映し出すMeta Orion(ワーキング・プロトタイプ)。発売時期は未定で、市販までには、現在1台あたり約1万ドル(約150万円)とされるコストや、高解像度化、量産性の課題を解決する必要があるやや縁が太めのメガネ程度のフォームファクターで、半透過イメージを現実の情景に重ねて映し出すMeta Orion(ワーキング・プロトタイプ)。発売時期は未定で、市販までには、現在1台あたり約1万ドル(約150万円)とされるコストや、高解像度化、量産性の課題を解決する必要がある Photo:Meta