――この作品を観ながら、これからまたアクション映画が増えていくのかなぁ?とちょっと期待したんですが、たとえ作られても日本や中国のチームがサポートしつつ、香港人スタントマンが入って……「香港映画」が撮られるという形になる?
「それはアクション監督にもよります。あとはそもそも「香港映画」って何なんだ?という話なんですが。たとえば僕が今年監督したある作品は香港の出資なんですがバンコクで撮影、日本のアクション監督、日本のスタントチームが来てて、タイのスタントチームとコラボして、役者は中国からも二人、インドネシアから二人、アメリカからも……で、プロデューサーや制作部は香港人。監督は僕だから日本人。「それいったいナニ映画ですか?」っていうレベルですよ。だから、香港映画どうこうというより……まぁそれぞれ頑張れよ、と(笑)」
2024年、香港映画はホームランが多かった
「だいたい、アクション映画自体も90年代までずっと景気良かったわけじゃなく、1973年にブルース・リーが死んで下火になったので、ジャッキー・チェンはオーストラリアの両親の元に帰ったりしてた。その間、『Mr.Boo』とかが流行って、その後コメディカンフーがブームになってジャッキーやサモ・ハンがスターになった。
でもそれも80年代初めには淘汰されて、現代風アクションにシフトし始めた。そして『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファものが当たって……ぼくが90年代にジャッキー・チェンに『スタントマンになりたい』って伝えたとき、彼は『香港映画にはもうアクション映画はない。ジャッキー映画だけだ』と言ったことをすごくよく覚えています。
そこから『黄飛鴻』シリーズが当たったけどそのブームも93年には終わり、これからどうする?と思っていたら、また『古惑仔』(邦題『欲望の街』)なんかの現代モノがヒット、それが落ち着いたら今度は『マトリックス』ブームで香港人スタントが海外に駆り出され……そんなサイクルで生き残ってきたのが香港映画なんです。3年から5年おきくらいに起死回生の大ホームランが出現してきた……今年は特にホームランが多いですね」(谷垣さん)
――確かに今年は話題作がたくさん出ていますね。
「……で、香港人のいいところは毎回、「これからはオレたちの時代」って調子に乗ること(笑)。調子に乗ることでブームが伸びているのもある。でも、それは「継承」とかじゃない。「継承」って言葉、ぼくはあんまり好きじゃないですね。だって終わりかけているから「継承」なわけでしょ?
全盛期のジャッキーやサモハンは「継承」なんてこと、考えていなかったはず。彼らが考えていたのは、どうやったら映画を最高に面白くできるかだけだった。だから、「継承」じゃなくて、「オレ、すげえだろ?!」って、調子に乗って作り続けるのが一番健康な状態じゃないですかね」