デジタル時代、撮影スタイルはどう変わった?
「アクションってね、やっぱり安全にやらなきゃダメじゃないですか。そしてできた画面が危なく見えないといけない。だから、刀とかも本物ではない小道具を使うわけですが、それが偽物に見えてはいけない。デジタルならそれを本物にすげ替えることができるんですね。地面に柔らかいクッションを敷いて撮影しておいて、後で硬い地面にすり替えるとか……それがいい悪いではなくて、単純に選択肢は増えたということです。ただ、フルCGってのはまだ選択肢にはなりにくい。実際に人間がやってみせる必要性というのは逆にもっと高まっていくと思います」
――その「実際の人間」ですが、「90年代が戻ってきた」と言いつつ、考えてみたら昔のジャッキー・チェンとかサモ・ハン・キンポーたちのように、家が貧しくて小さな頃から京劇学校に送り込まれてカンフーを学ぶ、なんていうことは今ではもうないですよね? となると、今のスタントさんはどこから出てきているんでしょうか?
「……実はね、日本でよく誤解されているんですが、ジャッキーたちが学んだのは単純にカンフーだけじゃないんです。彼らは京劇の役者になる訓練を受けた、つまり子役だったんですよ。カンフー使いではなくて優秀な子役。だから映画界でも通用した。でも、そういう学校はもう1974年頃に閉校してしまった」
――ああ、そうでした。彼らの子供時代を描いた『七小福』なんて映画もありましたね……。
「香港が京劇の時代じゃなくなって学校が閉じられた結果、そんな彼らが大挙して映画界に流れ込んだ。彼らはフィジカルに鍛えられた役者だったから映画界にうってつけだったし、そのおかげで香港映画のアクションが飛躍的に伸びたというところもあると思います。今はもうあんな人材はいない」