いつも気を使い過ぎて、心が疲れてしまう」「このままで大丈夫なのか、自信がない」と不安になったりモヤモヤしてしまうことはないでしょうか? そんな悩みを吹き飛ばし、胸が晴れる気持ちにしてくれるのが『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』です。悩む人たちに40年以上向き合ってきた精神科医が、自分の娘に「どうしても伝えたかったこと」を綴った本書は、韓国で20万部を超えるベストセラーとなりました。本記事では、その内容の一部を紹介します。

【疲れた心に】大人になって「大泣き」してない人が、注意すべきことPhoto: Adobe Stock

「泣きたいときは声を上げて泣きなさい。涙の泉が枯れ果てるまで。

私たちは一生のうちどれくらいの涙を流すと思う? ひょっとしたら、笑顔よりも涙のほうが多かったりしてね。

そもそも、人は皆、生まれた瞬間から泣き声を上げる。涙は人間にとって最初の言語だ。

きっとあなたも、生まれてすぐに元気な泣き声を聞かせてくれたのだろうね。

「だろうね」、というのは、私が心から待ち望んでいたあなたの産声を直接聞くことができなかったからだ。

一体何を恐れたのか、あなたがこの世に出てくることを激しく拒むものだから、私はつらい陣痛の末に帝王切開を選択するしかなかったからね。

ところで、精神分析学者のオットー・ランクはこんなことを述べている。

「胎児にとって、母胎という守られた世界から外の世界に生まれてくること自体、根源的な不安を誘発する“心理的外傷”である」と。

赤ちゃんが泣きながら生まれてくるのには、そんな心持ちも影響しているのかもしれない。

赤ちゃんというのは、空腹でも泣き、眠たくても泣き、退屈でも泣く。彼らにとって泣くという行為は、喜怒哀楽のサインのようなものだ。

しかし、成長して言葉を操れるようになると、人間は本来のコミュニケーション手段だった「泣く」という行為を警戒するようになる。

その裏には、子どもの頃、大人たちから「泣いたら負けだ」とからかわれたり、「泣くと鬼が来るよ」とおどされたり、「男が泣くのは人生で3度きりだ」などと追い詰められたりする因習がある。

これはつまり、「人は、泣くというネガティブな感情がコントロールできてこそ一人前である」と刷り込まれてきたようなもの。

私たちが成長するにつれて泣くことをはばかるようになるのは、その結果なのだ。

(本記事は『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』の一部を抜粋・編集したものです)