「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。

エリートだったのに「人生後半で転落する人」と「何歳になっても成果を出す人」の違いとは?Photo: Adobe Stock

年を取ることで高まる知性もある

「人生の秋」以降のステージで起きる「身体的な変化」について考えてみましょう。

 私たちの知的パフォーマンスは、平均的にはキャリアの20年目で半減期を迎えます。つまり、25歳で仕事を始めた人であれば45歳前後でピークを迎え、以降は減衰していくということです。ユングが40代を「人生の正午」という美しいメタファーでたとえたことについてはすでに紹介しました。

 つまり、全般的に知的パフォーマンスは「人生の秋」に入るころから低下する、ということなのですが、一方で、中には高齢になっても一向に知的パフォーマンスが低下しないように見える人もいます。

 例えばご高齢にもかかわらず、一向に「言葉の鋭さ」が失われないな、と感じさせる人が皆さんの周りにもいらっしゃるでしょう。当たり前と言えば当たり前なのですが、高齢者は全般に若い人よりも豊富な語彙を持っており、それらの語彙を組み合わせて概念や状況を的確に表現することが得意です。

 また、複雑なアイデアを説明することも得意で、時にはアイデアの発案者以上に、そのアイデアの意味を分かりやすく解説することができますし、複雑なアイデアを組み合わせて活用する能力も高齢者のほうが高いことがわかっています。

 確かに、高齢者は、画期的なアイデアを生み出すことや、素早く論理的に問題を解決することは苦手です。しかし、既知の概念を組み合わせたり、新しい概念を他者に向けて適切に表現したりするのはとても上手なのです。

 つまり、私たちの知的パフォーマンスには「加齢によって低下する種類のもの」と「加齢によってむしろ向上する種類のもの」とがあるのです。このことを知っている人と知らない人では、「人生の秋」の過ごし方が全く変わってくるでしょう。