「老けない脳」をつくるためには、食事の習慣が重要だ。特定の栄養素を大幅に減らしたり摂りすぎたりせず、多種多様な食品を摂取した方が認知症のリスク低下にもつながる。食の多様性を確保するために自炊は有効な手段だが、自ら手を動かして料理をすることは、脳を活性化させる効果もあるのだという。脳機能研究の第一人者が脳に効く食事の摂り方を解説する。本稿は、川島隆太『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
炭水化物の摂取量は
多すぎても少なすぎてもダメ
一時期よりはブームが落ち着いたようですが、「糖質オフダイエット」を実践したことがある人も多いのではないでしょうか。
急激な血糖値の上昇と下降がインスリンの過剰な分泌を促すことになり、脂肪を蓄積しやすくなるので、血糖値の振れ幅を大きくしてしまう米やパン、麺類、菓子などの糖質をとりすぎないようにして、血糖値の変動を穏やかにしようというダイエット方法です。
糖質オフダイエットがなぜ多くの人に支持されているかというと、やはりわれわれの摂取カロリーのなかで多いのが、炭水化物(糖質)と脂質だからです。特に炭水化物は主食として手軽にとることができるので、それを減らすことですぐにカロリーカットにつながります。
ところが、糖質オフダイエットをすると、心筋梗塞を起こしやすくなったり、糖尿病を発症しやすくなったりする、さらには死亡率が高くなるということが報告されているのです。なぜこうしたリスクが増えるのかというと、糖質を控えることで、相対的に脂質を多く摂取しがちになるからではないかと考えられています。
さらに、炭水化物の摂取量については、多すぎても少なすぎても死亡リスクが高くなるという研究もあります。ではどれくらいの糖質をとるのが程よいのかというと、これまでの医学的なデータからは、「摂取カロリーの約半分弱ぐらいが炭水化物であるのがベストである」ということがわかっています。
また、炭水化物は米や小麦といった主食でとるのがいちばんだという結果も出ています。糖質とともに食物繊維をとることができる米や小麦などの炭水化物の摂取量が減ると、便秘になってしまうためです。
ダイエットに効くのは
糖尿病患者の食事法
炭水化物を制限すると、60%の人が頭痛を経験するというデータもあるので、健康のために痩せようとしている場合は、炭水化物だけをセーブするのではなく、さまざまな食品の量を上手に制限するということが重要です。
ダイエットをする場合、ぜひ参照していただきたいのが、糖尿病の患者さんたちのための食事療法のやり方です。