45~74歳の人たちの食事と認知症に関するデータを分析したところ、1日に摂取する食品の種類が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて認知症発症リスクが約30%も低くなっていることが確認されたのです。つまり、摂取する食品が多いほうが認知症の発症率が低いことがわかります。

 ちなみに、男性に関しては食の多様性と認知症発症の関連は確認できませんでしたが、ひとり暮らしの男性に限ると、女性と同様に多様な食品を摂取していると認知症のリスクが低下する傾向にあることがわかりました。

 これらの差には、男女の食に関連する行動の違いが影響している可能性が考えられています。高齢者を対象とした研究では、女性は同居者の有無に関わらず食事の準備を行っている傾向がありますが、男性はひとり暮らしの場合は食事の準備をしても、同居者がいる場合は自分で食事の準備をしない傾向があると報告されています。

自炊をすることで
ビジネススキルもアップ!?

 こうしたことから、「食の多様性の高い食事をとるための食行動(例えば料理をする、献立を考える)が認知機能の維持、ひいては認知症発症を予防したと推察されるのではないか」と研究グループは述べています。

 食事の準備が面倒なときなど、つい手軽に済ませられる麺類や丼ものだけで食事を終わらせてしまうこともあるでしょう。まずは、そこに何か1品加えるだけでもいいので、品数を増やすよう意識してみてください。いろいろな食品を食べることはもちろん、何をプラスしようかなと考えて手を動かすことも、脳の活性化につながります。

 食べるもの、食べるタイミングと同様に、そもそも食べるものをつくる「料理をする」という日々の習慣も脳を活性化させてくれます。

 料理を完成させるまでには、「何をつくろうかな?」と献立を考え、使う材料を揃え、下ごしらえをして、手順や時間の算段をする必要があります。

 このように目標を設定して、それに向かって逆算で手順を考えるという行為が、脳の「実行機能」と呼ばれる機能そのものの鍛錬になります。実行機能の高い人はワーキングメモリーの容量が大きいという相関性もあります。実行機能を鍛えることで、ビジネススキルも上がっていきます。