また、手際よく数品を同じタイミングでつくり終えるためには、複数の作業を同時に行う必要があります。お湯を沸かしながら材料を切る、鍋が立てる音に気をつけながら肉の焼き色を確かめるなど、自然にデュアルタスク、場合によっては2つ以上のマルチタスクをすることになり、かなり効果的な脳のトレーニングになるのです。

脳の健康を考えるなら
老後の趣味は料理で決まり

 実際、年齢を重ねた人にとっても料理が脳のトレーニング効果を与えてくれることがわかっています。東北大学と大阪ガスが行った共同研究でも、平均約70歳の方たちに毎週2時間の調理講習に参加してもらった上で、自宅でも毎日30分以上の調理作業を行ってもらったところ、3カ月後には前頭前野の機能が向上しました。1日30分、料理をするだけで脳のトレーニングになっているのです。

 匂い、音、水の感触などを五感で感じられるのも、脳がいきいきとするきっかけになります。そしてなにより、自分の好きな材料を使って好きなものをつくる。食べたかったものをつくり上げて食べることにも、お金を出しても買えない価値があります。

 このように、料理をつくると脳がよく働くので、リタイアした後の趣味として特におすすめできます。いろいろな食材を使い、手間を惜しまずにつくれば、家族の健康のためにもいいですし、自分の脳の健康にもいい。一石二鳥の趣味になると思います。

 男性でも、普段働いている人でも、そういった料理が性に合うという人は多いのです。計画を立ててタスクを達成していくプロセスが、ビジネスとよく似ているので、ビジネス社会のなかで生きてきた人にはもってこいです。

 リタイアした後に、することがなくなってぼんやりしてしまう人も少なくありませんが、料理はこれまでの経験をそのまま活かせるので、楽しく脳を鍛えられる習慣になることでしょう。これまであまり料理をしなかったという人も、簡単なものから始めてみてください。