何かにつけて悪意に解釈する「敵意帰属バイアス」

 何かと攻撃的な反応を示す人の場合、普通なら何も感じない言動にも悪意を読み取って怒り出すなど、明らかに認知の歪みがある。多くの人を唖然とさせたり戸惑わせたりするのも、認知があまりにも歪んでいるからだ。

 先ほどの事例でも、励ましの言葉に反発したり、親切心によるアドバイスに反発したりしているわけだが、そこにも相手の意図を読み違えるといった認知の歪みが明らかに見られる。

 攻撃的な認知の歪みについて理解する際に重要となるのが手がかりの解釈だ。つまり、相手の言動の意味をどのように解釈するかということである。

 たとえば、仲間からからかわれたとき、「侮辱された」と解釈して怒り出す人もいれば、「ユーモアのあるからかい」と解釈して一緒になって笑う人もいる。相手の言動をどのように解釈するかによって、その後の反応に大きな違いが出てくる。

 何かにつけて攻撃的な反応を示す人に漂う敵意は、この解釈に起因するところが大きいと考えられる。そのタイプの人の頭の中にあるのが、何かにつけて悪意に解釈する認知の歪みである。

 心理学者のディルやアンダーソンたちは、攻撃的な性格の人はあいまいな言葉ややりとりを敵意のあるものと解釈する傾向が強いことを実験によって証明している。

 このような認知の歪みを「敵意帰属バイアス」という。それは、他者の言動を敵意のせいにする認知傾向の歪みのことである。敵意帰属バイアスを持つ人物ほど、自分に敵意を向けてくると感じる相手への報復という意味で、相手に対して攻撃的な言動を示しやすくなる。つまり、やたらと攻撃的な人物は、自分が攻撃されたと本気で思い込んでいるのだ。ゆえに、当然の報復として攻撃的な反応を示すのである。

相手を変えようとせず、こちらの気持ちの持ち方を変える

 このように、何かと攻撃的な反応を示す人は、認知が著しく歪んでいるものである。からかわれたときに、「親しみを持って言葉をかけてくれた」と解釈すれば友好的な反応になるだろうが、「人のことをバカにした」と解釈すれば攻撃的な反応になるのも仕方のないことである。仕事上のアドバイスを受けた際も、「親切にアドバイスしてくれた」と解釈すれば友好的な反応になるだろうが、「どうせこんなことも知らないんだろうと、マウンティングしてきた」と解釈すれば攻撃的な反応になるのもやむを得ない。

 そうした相手の言動の意図についての解釈は瞬時に行われ、いちいち意識しない、つまり無意識のうちに行われるため、攻撃的な反応を示す人は、相手が自分のことをバカにしたとかマウンティングしてきたなどと本気で思い込んでいるのである。