できている人はほとんどいない!?
傾聴で意識すべき3つのポイント

 さて、傾聴とはただ熱心に相手の話を聞くことではありません。相手の言葉をそのまま受け取るだけでなく、より深いレベルで相手の状態を理解し、その人の感情や求めていることなど、言葉にならない部分も汲み取ります。「アクティブリスニング」(積極的傾聴)の概念を提唱したアメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズは、傾聴時に聴き手が意識すべき3つのポイントをあげました。

 ひとつ目は共感的理解。相手の立場に立って、その人の気持ちや考え方を共感しながら理解しようとすることです。「相手の気持ちに寄り添う」姿勢で、相手と同じように感じます。

 2つ目は無条件の肯定的関心。自分自身の好き嫌いや善悪などの判断を入れずに聴くことです。フラットな目線で「なぜ、そのように考えるのか?」など、その背景に関心を持って聴きます。

 3つ目は自己一致です。自己一致とはわかりやすく言えば、自身の内面と外面に一貫性があることです。たとえばわからないところは「わからない」と伝えるなど、自分をごまかさない態度で相手に接します。

「傾聴」とはただ聞くだけでなく
目と心も相手に向けて聴くこと

「傾聴」と言うと、真っ先に「耳で聞く」イメージを持たれます。もちろん、耳で聞くこともそのひとつではありますが、「聴く」という漢字をよく見てください。漢字の成り立ちからもわかるように、実際の傾聴では、耳だけでなく目と心も使って全身で「聴き」ます。

 たとえば、相手の表情や視線、所作から心情を読み取ったり、こちらのリアクションによる変化を察知したり、言葉の裏側にある意図を感じ取ったり……。相手を観察しながら、全身の感覚をフル稼働させて情報を収集・分析する総合的判断力が問われるスキルです。

 耳で聴く=事実傾聴 相手が言葉にしたメッセージにしっかりと耳を傾けて、理解する。

 目で聴く=推測傾聴 言葉以外の相手の行動(姿勢、表情、しぐさ、声のトーン)などにも注目し、様子を観察する。

 心で聴く=感情傾聴 言葉の裏側にある感情に寄り添い、共感する。