他にも、高性能な音声認識と翻訳機能を持つAIデバイスにより、聴力が低下しても周囲の人々とスムーズにコミュニケーションを取れるようになります。

 AIの自動会話プログラムであるチャットボットが家族や友人とのやり取りを支援し、メッセージの作成や返信の提案を行います。これにより、認知機能が低下しても大切な人々との絆を維持できます。

 生活支援と安全確保もAIがサポートしてくれます。家中にセンサーとAIを設置することで、転倒や異常を自動検知し、緊急時には即座に対応できるようになります。

 また、AIアシスタントが薬の服用管理や日々のスケジュール管理を行い、忘れずに規則正しい生活を送れるようサポートしてくれるのです。

 これらの技術により、シニアがより自立的で充実した生活を送れるようになるでしょう。無理して居場所や友達をつくっておくという発想はもういらないのです。

「お薬を飲む時間です」と
AIが語りかけてくれる

 厚生労働省が「2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になる」という予測をしているように、認知症と老いは切っても切り離せない問題です。私自身が携わってきた高齢者医療の臨床現場での経験からも、人はいずれボケるという事実からは逃れられないと考えています。

 私が勤めていた浴風会病院は、もともと関東大震災で身寄りを失った高齢者の救護施設として設立された病院でした。のちに老年医学の研究を行うようになり、入所者の診療とともに亡くなった方の解剖を行い、高齢者の脳や臓器についての研究が進められました。

 私が勤務していた当時は、年間100例ほどの解剖が行われていました。結果を見てわかったのは、85歳を過ぎた人はもれなく脳にアルツハイマー型の神経の変性があるということでした。つまり、ボケることは誰しも覚悟しておかなければいけないということです。

 ただし、認知症になった途端に何もできなくなるわけではありません。個人差はありますが、目が見えづらくなったり耳がだんだん聞こえにくくなったりするのと同じで、ゆっくりと進行します。

 そして、AIがあれば記憶障害や失見当識、言語能力の低下に関しても恐れることはありません。さまざまなAIによるサポートが期待されており、以下に具体的な例を挙げます。