ファミリー層などが新築から中古に流れたことで、首都圏では中古マンションの成約件数が新築の供給戸数を上回っており、市場は完全に中古が中心になっているという。とはいえ需要が増加したことで、中古の市場価格も上昇傾向にある。マンション購入を検討している人にとっては厳しい流れが続きそうだが、買い時はいつなのだろうか。
「いま非常に高くなっているマンションが今後も上がり続けるかというと、必ずしもそんなことはありません。今のマンション高騰を演出したのは、金利です。2013年以降の大規模金融緩和で、ほとんど金利がない状態が10年ほど続きました。しかし、日銀の政策見直しにより金利は引き上げられ、今後さらに上がる可能性もあります。金利が上がると住宅ローンを利用する人にとって負担が増え、需要が抑制される可能性がある。投資家にとっても調達コストが上がるため不動産価格に大きな影響を与えます」
金利上昇という要素が加わることで、市場の潮目が変わる可能性は大いにあるようだ。
「円安を利用していた外国人投資家も様子見をする可能性があり、相続税対策でタワーマンションを買っていた人も税制改正でメリットが薄れています。これらのことを考えると、ヒートアップしていたマンション市場に冷や水が浴びせられる可能性があります」
中長期的な視点で見ても、今後首都圏には空き家が増え、住宅市場にも影響するだろうと牧野氏は言う。
「首都圏には約900万人の高齢者がおり、今後10年ほどで相続が発生します。相続した家を売るか貸すかの選択肢を選ぶ人が増え、2030年頃から大量の中古住宅が市場に出回る可能性があります。これは供給圧力となり価格に影響を与えるでしょう。35年などの長期ローンを組んで高級マンションを買うという今の状況が正しい選択だったと言えるかどうかは、その頃にならないとわかりません。必要以上に負担をかけたくないという人は、一旦購入を待つという選択も悪くないと思います」
マンション購入の際は金利動向や人口動態をよく見極めることが重要なようだ。10年後、20年後には首都圏で空き家が大量発生するなかで、高額かつ長期的なローンを組んで新築マンションを購入するということ自体、レアケースになっていくかもしれない。