そして、これは日本特有の問題ですが、建設業に従事する人が激減し、人手不足になっています。特にコロナ禍以降、ベテランの技術者が次々と引退し、建築技能工と呼ばれる特定の技能を持つ人が不足しています。さらに、働き方改革によって残業や休日出勤に厳しい制約がかかったことで工期が延び、少なからず建築費に影響を与えています」
コロナ禍で外出が減り、高齢化も相まって引退を決意した技術者は多く、また若い世代の育成が十分でなかったため、業界全体の人手不足につながっているという。
さらに建築コストの増加だけでなく、マンションの購入層が変化していることも価格上昇に影響を与えているようだ。
「これまでマンションを買うのは、ファミリー層や結婚したカップルが多かったのですが、最近は投資家や相続対策目的の富裕層が非常に多くなっています。大規模金融緩和によって、マンション購入による投資需要が急増したのです。最近は国内だけでなく、外国人投資家も増えています」
市場価格の上昇はいつまで続く?
今後は潮目が変わる可能性も
投資目的のマンション需要が増加したことで価格が上がり続ける一方、昨今の新築マンションはファミリー世帯には手が届かない価格帯になっている。
「新築マンションは都内平均で1億1000万円くらいの売り出し価格になっており、サラリーマン家庭ではなかなか手が出ません。手が届くのは、共働きで世帯年収1500~2000万円のパワーカップルくらいで、それ以外の多くの人々はマーケットから弾かれている状況です。そのため今度は中古マンション市場に需要が集中し、中古価格も上昇しています」
新築だけではなく中古マンションの価格まで上昇し、住宅を心から欲しいと願っている人にとっては厳しい状況が続いている。
「最近は新築ではなく中古を買ってリフォームする傾向が強まっていて、立地などにこだわらなければ、お手頃な中古マンションもたくさんあります。しかし、都心への通勤や子供の教育環境などを考えると、なかなか満足のいく物件が見つからないというのが現状です」