残業は、無制限に命じることができない

カタリーナ「残業を命じるには、そもそも労働契約や就業規則に業務上必要な所定外労働をさせる規定があるうえに、36協定が締結されている必要があることは知っているわよね?36協定とは『時間外労働・休日労働に関する労使協定』のことね」

葛城「はい、知っています」

カタリーナ「残業をさせる場合も原則として月45時間、年360時間が上限で、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできないわ。この場合も、上限時間は決められているけれど」

葛城「それなら、ちゃんと臨時的な特別の事情のある特別条項付きで締結していますよ」

カタリーナ「特に残業の理由を限定せず、単なる業務繁忙や業務の都合上必要な場合は、臨時的な特別の事情と認められないから注意が必要よ。それと、原則である月45時間の時間外労働を上回るこのできる回数は、年6回までだってこともわかっているわよね?」

葛城「そのあたりは、人事部の方でチェックしているはずだと思いますが……」

カタリーナ「あなたの部下は、残業が不満で36協定のことも調べていたかもしれないわよ」

葛城「まさか……」

カタリーナ「いくら業務が繁忙とはいえ、無制限に残業を命じることはできないわ。それに、職場環境が不満でメンバーが退職でもしたら、今は簡単に採用できないからもっと大変になってしまうわ」

葛城「やめてくださいよ。これ以上、人手が減ってしまったら本当に困ります」

正当な理由のない残業拒否をした社員を懲戒処分できるのか

葛城「でも、プライベートを優先したいから残業はしない、という言い分を認めるわけにはいきません。他の社員にも示しがつきませんしね」

カタリーナ「正当な理由がなく残業を拒否した場合、雇用契約上の義務を果たしていないわけだから、懲戒処分することも可能よ。でもまず、残業命令を拒否する社員には、残業が必要な理由を説明して、説得する機会を持つことが大事ね」