葛城「それでも従わない場合は?」
カタリーナ「口頭ではなく、文書やメールとかきちんと記録が残る形で、残業の業務命令を出すことね。残業命令があることが明確になって初めて、従わない社員への懲戒処分が可能になるわ」
葛城「なるほど。今日は頭ごなしに業務命令だと言ってしまいましたが、彼には残業が必要な理由を説明しようと思います。ただ部下たちがこれ以上不満をため込まないように、業務プロセスの見直しも図っていこうと思います」
カタリーナ「それはいいわね。これから育児や介護をはじめ、様々な理由で残業が難しい社員が増えていくから、労働時間のマネジメントはますます重要になっていくわね」
葛城「なかなか大変ですが、頑張ります」
●労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間・1週40時間以内としており、これを「法定労働時間」という。会社が残業命令を行うには、労働契約および就業規則により残業を行わせる旨の定めが必要。そのうえで時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)の締結および労働基準監督署へ届け出ることで法定労働時間を超えて労働させることができる。
●時間外労働の上限は、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできない。また、月45時間を超えることができるのは、年間6回までとなっている。
●育児のための所定外労働の制限(残業免除)は現行では3歳未満の子を養育する労働者に限られているが、2025年4月以降は改正により「小学校就学前の子を養育する労働者」に対象が拡大される。
※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。
(社会保険労務士 佐佐木由美子)