テレビ朝日HDもフジと同じ監査構造
もう一つ見ておきたいのが、取締役が行う業務を監査する監査役会の設置状況だ。日本企業の6割が監査役会設置会社として、外部の会計監査役会社に監査を委託している。TBSHD、日本テレビHDもそうしている。
企業統治がしっかりしている企業であれば、会計士の資格がある社外取締役が監査委員長になり、社外取締役だけに監査が一任される。ところが、フジ・メディアHDとテレビ朝日HDは、監査委員会設置会社ではあるが、企業内に監査委員会を設置しているばかりか、委員長は社内の人物で、社外取締役でもない。
フジテレビの港浩一社長が会見で「外部の弁護士を中心とする調査委員会で調べる」としたのと同じように、緊急事態に直面しない限り、外部に一任しないという組織文化があるのかもしれない。
社外の監査役や取締役には、本来、独立性が高く、企業と関係のない人を選任すべきだが、フジ・メディアHDの場合は多くが株主や取引関係、グループ会社の役員で構成されている。その割合は他の日本企業よりも多く、企業統治のレベルが高いとはいえない。
日本では欧米ほど独立性の基準は厳しくないが、中には、全く違う業界やライバル企業から役員を受け入れて組織改革に成功した企業もある。
さらに、内部通報窓口の機能にも触れておこう。
テレビ局に限らず企業の現場では、業務の一環として、大口顧客を接待するケースもあるだろう。しかし、特にテレビ局の場合、視聴率を上げてくれる旧ジャーニーズ事務所などのタレント、キャスティングをするプロデューサー、起用される側の局のアナウンサーなど、番組を構成するために必要な役割の重さが上下関係を生み、まるでカースト制度のようにはっきりしている。そのため、リスク管理を重視する必要があるが、内部通報などの窓口は機能していないのが実態だ。