日本企業における社外取締役は形式的でお飾り的であるという批判もあるが、最近では、独立性の高い会計士、弁護士の資格を保有している社外取締役を最低1人は選任している企業がほとんどである。しかしテレビ局は、不正の監査やモニタリングチェックができる能力のある人よりも、多数を“身内”で固める傾向が強いことがうかがえる。さらに言えば、人選では経営面を重視しており、リスク管理は重視していないことがわかる。

 フジテレビは取締役が多すぎて、社外取締役が少ない。本来、取締役に占める社外取締役の比率が高いと不正抑制効果が生まれ、中でもリスク管理、監査会計能力のある著名な社外取締役を選任した場合は、その影響力は大きくなる。

 例えば、日本企業でも、影響力のある社外取締役が不正のあった会計監査法人を変更したり、経営陣を一新したりした事例がある。米国では、業績悪化や不祥事が起きた場合は、経営者1人ではなくチームごと斬新する。余談だが、米国の人材ビジネス会社は、そのために常に取締役クラスの新メンバーをチーム単位で紹介する。組織を変えるためには、大規模な改革が必要なのだ。

大株主に海外企業の存在感 

 フジ・メディアHDの株主の中には、「物言う株主」として知られる米国投資ファンドのダルトン・インベストメンツも名を連ねている。同ファンドは英国の関連会社と合わせてフジ・メディアHDの株式7%超を保有している。

 今回の中居氏問題の報道を受けて、ダルトンは子会社のフジテレビの企業統治に深刻な欠陥があると指摘した。もし、株主にこのように「物言う米国企業」が存在しなかったら、今回の問題は見過ごされ、本質的に組織を改善しようとする動きは断たれてしまっていたのではないか。

 実際、他社で創業者によるワンマン経営に起因する不祥事が起きた例では、株主が家族や親戚で占められていることで大株主の創業者による不正にモノを言えなかったパターンが多いのだ。

 ここで、民法テレビ局を擁する大手メディア4社の親会社の大株主10社の顔ぶれと持ち株の割合を見ておきたい。