i-MiEVは、三菱自の軽の「i」がベースで、iのエンジン、トランスミッションの代わりにモーターなどの電動要素を積み、EVに仕立てています。iはリヤにエンジンを積む後輪駆動モデルだったので、i-MiEVも同様に後輪駆動です。当初は法人向けのみでしたが、10年4月からは個人向け販売も開始しました。

 量産型市販車として初めてリチウムイオンバッテリーを採用したのが、i-MiEVでした。バッテリーは床下に搭載されています。この設計思想は今のEVにも引き継がれ、重心を軽く、フロアの剛性を強固にする効果があります。

 実際に乗ると、ベースとなったiよりも重量が増しているにもかかわらず、ずっと安定したハンドリングを披露し、とても好感の持てるものでした。充電方式は普通充電と急速充電です。普通充電は専用ケーブル、急速充電はCHAdeMO方式なので、今のEVと変わりません。

 i-MiEVが売れなかった最大の理由は、世に出るのが早過ぎた(時代が追い付いてなかった)ことに集約されます。要するに当時はまだ、EVの認知度が低かったのです。

 累計販売台数でみれば、日本で最も売れているEVは日産のリーフです。リーフの登場により、EVも普通のクルマとして扱われるようになりつつありますが、i-MiEVの時代はまだ、EVはかなり特殊なクルマとして見られていました。

 今でこそ、特に軽EVのようなバッテリー容量の少ないモデルは、自宅での普通充電が当たり前になっています。しかし当時はまだ、EVは「急速充電スポットに充電しに行くクルマ」だと思われていました。しかも09年当時、急速充電器は全国でたったの95カ所しかありませんでした。

 パッケージングにも難がありました。i-MiEVは動力関連の効率を優先するあまり、空気抵抗が少ないデザインで、車内空間が狭かったのです。4人ぎりぎり乗ると、荷物があまり積めませんでした。

 しかし、三菱自がi-MiEVというクルマを世に出した先見性は素晴らしいことといえます。クルマの進化には、チャレンジ精神が何より大切だからです。