4.利点の強調
  バイヤーの疑問・不安のレベルを下げ、商談成立の確率を上げる

 営業にはこれが苦手な人が多いのですが、バイヤーにとってのメリットをしっかり伝える必要があります。提案の利点を強調し、顧客にとっての具体的な利益を示さなければなりません。例えば、コスト削減や業務効率の向上、など。

 バイヤーにとってのメリットが伝わっていないと、「いや、ちょっと今日、一応は持ち帰らせてください」といった返答になりがちです。

 ですから、テストクロージングといって、「私はこういうことを考えているのですが、バイヤーさんはどう思いますか?」など、利点を説明した後にバイヤーの疑問や購入意向を確認するための質問を活用することも有効です。

 さらには必要に応じてリスクも説明し、どのように対処するかを示すことで、バイヤーの懸念を取り除きます。「この点に関しては、こんなテストをしてこんな結果が出ています」といった不安を払拭する対応も有効です。それでも不安な様子であれば「では、一度、持ち帰ります」という対応もありえます。

 また、バイヤーからのフィードバックを受け入れ、必要に応じて提案を調整する柔軟性も重要です。

 例えば、後述する「SPIN話法」の解決質問をして、顧客の認識と自分の理解が一致しているかを確認することにより、バイヤーがどの程度購入に前向きかを把握することができます。追加説明を行い、購入意向を高め、最終的なクロージングに向けた準備を整えることができます。

<トーク例>
●「エコクリーンプラス」の導入により、御社の洗剤カテゴリーの売上が約7~8%、粗利益が約10%増加すると試算しています。これは、高付加価値商品としてのプレミアム価格の位置づけと、リピート購入の高さによるものです。
●環境配慮型製品として、御社のサステナビリティ活動にも貢献できると考えます。これにより、環境意識の高い顧客層の支持を得られ、ブランドイメージの向上にもつながります。
●当社の独自技術により、製造コストを抑えながら高品質を実現しています。そのため、御社に魅力的な利益率を提供しつつ、消費者にも手の届きやすい価格設定が可能です。
●この条件で進めるとしたら、どのような点が気になりますか?

 利点の強調やテストクロージングは書籍『セールス・イズ』(今井晶也)などの、商談話法の中でも紹介されています。

5.ネクストステップの提示
  商品・サービス導入に向けて事案を前に進める

 最後に、次のステップを明確にし、商談を前進させるための具体的なアクションプランを提示します。バイヤーが好印象だと感じた段階で、2、3ステップくらいを合意して終わります。

 例えば、次のミーティングの日時設定や、必要なフォローアップの内容を明確にします。これにより、バイヤーは次に何をすべきかを理解し、導入プロセスがスムーズに進むようになります。

<トーク例>
●次回の商談では、具体的な販促計画と数値目標について詳細をご提案させていただきたいと思います。来週の水曜日はいかがでしょうか?
●本日のご提案内容をまとめた資料を明日中にお送りいたします。ご検討いただいた上で、追加でご質問等ございましたらお聞かせください。
●もしよろしければ、来月開催予定の当社新製品発表会にもご参加いただければ幸いです。実際の製品をご覧いただき、さらに詳しくご説明させていただきます。

 このように「説得的販売」の各ステップに沿って、バイヤーの関心を惹き、製品の価値を効果的に伝え、具体的な行動につなげることを目的としています。状況に応じて適切に組み合わせ、バイヤーとの対話を進めることで、商談の成功確率を高めていくことができます。

※本記事は『営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ』宮下建治(ダイヤモンド社)からの抜粋です。