「非常に重要な時」という表現は、アメリカは分岐点、つまり団体の名称の通り、ターニング・ポイントにあるという問題提起だ。今回の集会のスローガンは、「IDENTIFY★EMPOWER★ORGANIZE」=「自分が何者か認識せよ、力をつけよ、組織を作れ」だ。
演説では、これらに対する基本的な考え方が示された。カーク氏の演説は力強くかつ論理構成がシンプルで、団体の立ち位置や方向性を明快に示していた。
保守派が教育現場からの
「革命」を求める理由
カーク氏が最初に取り上げたテーマは教育だ。教育は言うまでもなく大学生や高校生にとって身近だ。学生という若い力を使って、ある意味扇動して、教育現場からの「革命」、つまり、下からの革命を目指すのが、「ターニング・ポイント・USA」の運動論だと受け止めた。カーク氏は、ここではホームスクーリングと教育委員会を取り上げた。
ホームスクーリングというのは、子供を学校に行かせるのではなく、同じ内容を自宅で両親などが教える制度のことだ。アメリカは国土が広大なこともあり、ホームスクーリングを選ぶという判断は特殊なことではない。かつての西部開拓時代には、同じ学校に何年間も子供を通わせることは、物理的にも難しかっただろう。そうした歴史的な背景もあるのだ。
ただ、現代のアメリカの保守派にとって、ホームスクーリングは別の政治的な意味も持つ。それは、彼らの視点で見れば、「左翼化した学校教育から子供を守る」ということだ。
アメリカでは、例えばカリフォルニア州のようなリベラル色が強い地域では、多様性の尊重が重視されている。近年日本でも関心が高まっている「LGBTQ」という言葉に代表されるセクシャルマイノリティーに対する意識がその代表例だ。
しかし、保守派の価値観はキリスト教に基づき、彼らによる解釈では、人間の性として存在するのは異性愛者の男性と女性だけであり、それ以外の概念を子供に教えることは危険なのだ。
カーク氏の演説では、ホームスクーリングについて、演説の導入部分に続いて、軽い感じで言及があった。カーク氏が、「この会場には、大胆にそして勇気を持ってホームスクールへの歩みを進めたお母さんやお父さんはいますか」と問いかけると、会場から大きな拍手と歓声が上がった。
会場には、若者だけでなく、引率者などの大人も一定数いるようだ。保守派の間では、ホームスクーリングが一種のトレンドになっていることは、会場で響いた拍手の大きさから推測できた。