保守派の集会に着火する
2つの人気キーワード

 クリティカル・レイス・セオリー(Critical Race Theory)は、批判的人種理論などと訳される。アメリカでは頭文字をとって、CRTと表記されることもある。アメリカ社会には、かつての奴隷制に代表されるように人種差別的な仕組みがもともと組み込まれているのだから、それを前提として、批判的な視点で人種差別問題を考えようという理論だ。

 大学や大学院で教えられるレベルの高度な理論であり、小学校や中学校で教えるものではない。しかし、保守派は、奴隷制度について、黒人が正しくて、白人が悪者などと教えるのは、白人の子供が可哀そうであり、いわば逆差別だなどとして、リベラルなどを非難する際にCRTを槍玉に挙げている。

 次に出てきたwokeも保守派がリベラルなどを攻撃する際のキーワードだ。wakeという動詞に由来する言葉であり、形容詞として使われている。

 この単語には、単に目が覚めるという意味だけでなく、気付くという意味もある。英英辞典では、アメリカのスラングであり、「重要な社会の事実や課題(特に人種や社会正義について)気付き、そして、積極的に注意を払っていること」(Merriam-Websterのウェブサイトより)という意味の形容詞と説明されている。

 さらに、この辞典では2つ目の用法として、批判的に使われるとして、「(人種や社会正義の問題で)政治的にリベラルやプログレッシブなこと」という意味の形容詞だとの説明もある。辞書に掲載されていることからも、すでに政治的な言葉としてアメリカ社会に定着していることがわかる。

 クリティカル・レイス・セオリー(CRT)とwokeは、いずれも保守派が教育問題でリベラルやプログレッシブを批判する際の代表的なキーワードだ。「ターニング・ポイント・USA」に限らず、保守派の集会で、これらのキーワードを使って演説を行うと、会場は盛り上がる。