ジェファーソンとは、アメリカ独立宣言の起草者の1人である第3代大統領のトマス・ジェファーソン、マディソンとは憲法の執筆者の1人である第4代大統領のジェームズ・マディソンのことだ。いずれもファウンディング・ファーザーズ(founding fathers)、アメリカ建国の父などと称される人たちだ。

 さらに、リンカーンは第16代大統領のエイブラハム・リンカーンを指し、「奴隷解放の父」として知られる。アメリカの保守系は、偉大な大統領たちを称える。それはアメリカの偉大な歴史の裏付けでもある。アメリカの偉大な歴史に基づいて保守として最も大切なのはビジョンであると訴えることで、人種の壁を徐々に越えている。

お互いの理解を深める
「コア・バリュー」

 思想に人種の壁を越える強靱性を与えているのが価値観だ。価値観は「バリュー」(value)あるいは、「コア・バリュー」(core value)という言葉で表現される。自分の人格をなす根本的な価値観のことだ。(編集部注/アメリカ保守派の基本的な価値観は、神への信仰と星条旗への忠誠。キリスト教国家として成立したアメリカ建国当時の精神への回帰を強く志向する)

「コア・バリュー」という言葉は、外国からの取材者である筆者が、彼らと心理的な距離を縮める時に有用な言葉だ。例えば、集会の取材に来た趣旨を参加者に説明する時に、「皆さんのコア・バリューに関心があるから来ました」と説明すると、すんなり理解してくれる。

 インタビューでは、「日本の視聴者に向けて、あなたたちのコア・バリューを説明して下さい」と質問すると、彼らの理念を説明してくれる。彼らは真剣に物事を考えているから、「日本の視聴者に」という前提条件がついていると、日本人という外国人に対して、できるだけ簡潔な説明をしようと工夫してしゃべってくれる。

 一方で「日本のコア・バリューとはどういうものですか」などと逆質問を受けた時には、結構答えるのに苦労したが、お互いのコア・バリューについて話をすることで、コミュニケーションはスムーズに進んだと思う。

 彼らのコア・バリューに話を戻せば、人種や学歴などといった表面的なことではなく、全人格をもって、自らの根本的な価値観で判断せよということだ。カーク氏というカリスマのこうした教えは、若者たちに強く響いている。