さまざまな不安を受け入れるのが
「起業家」に必要なマインド

 ちなみに、フランス語の「entreprendre」は中世ラテン語の「interprendere」に由来し、この言葉には「取る」または「引き受ける」という意味も含まれています。これは簡単に言えば、「新しいことを始めた自分を受け入れる」ということです。

 例えば、朝いつもより10分だけ早く起きるとか、帰り道に一駅手前で降りて歩いて帰るなどのように習慣を変えようとするとき、つい「嫌だな」と思ったり、「面倒だな」と感じたりするものです。

 起業も同じです。「このやり方で合ってるかな?」「こんなことをやっていて本当に大丈夫かな?」「お金が足りない。どうしよう…」と不安になることもありますが、そういった変化につきまとう心配事を込みで新しいことを始めた自分を受け入れる。これが、アントレプレナー(起業家)に求められるもう1つの側面です。

 もちろん、これまでの生活を大きく変えることは簡単ではありません。重要なのは、自分が少し頑張ることで引き受けられるリスクを見極めることです。

 筋トレと似ています。筋トレを始めたとき、最初にやってくるのは「筋肉の痛み」や「疲労」などの抵抗です。トレーニングの初期段階では、体が新しい刺激に慣れようとしているため筋肉痛やだるさがついて回ります。

 しかし、その痛みを乗り越え、週に1回、2回と徐々に回数を増やし、継続してトレーニングを行うことで、筋肉は強くなります。

 すると、以前はできなかったことができるようになる。最初は10回で限界だったのに、翌週には20回できるようになり、1ヵ月後には50回できるようになる。こうした成長過程によって、体つきが変わるだけでなく、「自分ならやればできる!」「昨日より前に進んでる!」というメンタルの強さや自信が育まれるのです。

日本の人口の4割が「給与所得者」で3割が「年金生活者」じゃあ残りは?『起業 神100則』(新井 一、総合法令出版)

「新しいことを始める」という行動。

 それによって変化する「新しい自分を受け入れる」という心構え。

 この両輪を兼ね備えている人こそ、起業家と言えます。