人当たりが良いのだが、仕事上のミスが多い
「仕事力」というと、コミュニケーション力とか論理能力とかをイメージしがちだが、じつは基本的な仕事力として、「記憶力」の果たす役割は意外に大きい。
例えば、客から言われたことを忘れたり、予約の電話を受けたのに予約表に入力するのを忘れたり、取引先から打ち合わせ日程の変更の連絡があったのに関係者に伝えるのを忘れたりするようでは、仕事に支障が生じる。
このように記憶というのは、仕事において、非常に重要な役割を担っているわけだが、「どうにも記憶が悪い従業員がいて困る」という経営者がいる。
「どうにも記憶の悪い従業員がいて困ってるんです。仕事に支障が出るくらい記憶が悪いんです。経営者仲間に話したら、『まだ試用期間内なら、辞めてもらえばいいじゃないか』って言うんですけど、良いところもあるんです。人柄はいいし、何と言っても人当たりがいいんですよ。お客に対してもとても感じよく応対できるから、戦力として生かせたらなあ、って思うんです」
記憶の問題はあるものの、人当たりも良くて貴重な戦力になってもらえそうだという期待もできるため、何とかならないかと頭を悩ませているという。記憶の問題さえクリアできればよいのだが、それが難しいようなのだ。
人当たりが良いため、他の従業員のミスと思われがち
相手が伝えたはずの用件が、じつは伝わっていなかったとなると、それは深刻な問題になりかねない。そういったことがよく起こるというのだ。しかも、いつも応対の感じがいいため、相手はその従業員に好印象を持っており、彼女のミスとは思わず、他の従業員のせいだと思い込むから、ややこしいのだという。
「たとえば、お客から電話があって彼女が応対し、予約を受けたのに、そのお客が予約の日時に来てみると予約が入っていない、といったことがあるんです。でも、馴染みのお客だと、彼女の感じの良い応対に好印象を持っているし、電話でも彼女が感じよく対応したから、まさか彼女のミスだとは思わないんですよ。だれか別の従業員が彼女からの伝言を受けて入力するのを忘れたに違いないって思っちゃう。それで関係ない従業員がとりあえず丁重に謝るんですけど、自分のミスじゃないから内心面白くないですよね」