だが、残念ながら時代が変わった。アピールしなければ、誰も認めてくれない。能力があることを示さないと、仕事を与えられない。

 自慢というのもアピールの一つだ。上手にアピールし、自分の実力をわかってもらってこそ、正当に評価してもらえる。

 ところが、下手な自慢をする人が多い。相手が飽き飽きしているのに、自分が成功した話を長々としたり、評価されていることを繰り返し説明したり。その中でも、単に「嫌な奴」というだけでなく、バカさをにじませるのが下手なマイナス自慢をする人間だ。

 話のきっかけとして軽くするのはまあいいだろう。気の利いた話題にすることはできる。しかし、ずっとそれを続けられると、聞いているほうとしてはたまらなくなる。

「私はほかの人と違ったところがある。アピールするところがある」という思いが、マイナス自慢につながる。ある種、ゆがんだ自己愛とでもいうか、周囲にもそれが伝わる。これも一つの自己顕示にほかならない。だから、マイナス自慢を繰り返す人は愚かに見える。

 誰もがついしてしまうのが忙しさ自慢だ。「寝る間もないんですよ」「一週間で三回目の出張ですよ」「デスクの上には半年でも終わらないほどの仕事がたまってますよ」などなど。

 本人に自慢する気はないことも多いだろう。あまりの忙しさに頭を抱えている。いかに大変かをほかの人にもわかってほしい、ねぎらいの声をかけてほしい。そんな気持ちから口にする。しかし、それは言葉を換えれば、「私は忙しくしているほど活躍しているんだ」「それほど引っぱりだこなんだ」という自慢にほかならない。

 いや、たとえはっきりと意識していなくても、忙しくしていることを誇らしく思っているのは間違いない。これは、特に忙しくしたくてもできない人に対しては強烈な嫌みになる。配慮不足であるばかりに、悪気がないのに愚かな自慢になってしまう典型だ。

 マイナス・アピールは、自己顕示欲の高さの表れ、と思って注意したい。