「餅は正月だけ」ではもったいない!
甘いも辛いもコメを凌駕するアレンジ力
海の懐の深さか、はたまた宇宙の如き広がりか――餅
最後に紹介したいのは餅である。餅はもち米から作られ、「米」とつくくらいだからやはり値上がりしているかと思いきや、このたび高騰している主食用米(本稿で「コメ」と称しているもの)ともち米は別もののようで、大幅な値上がりは確認できなかったものの、「サトウの切り餅」の価格が前年比で約12%ほどの上昇を示しているとのデータもあった。
カロリーでいうと、切り餅2個が茶わん1杯分のご飯に相当するらしい。「サトウの切り餅 400グラム」換算だと、1食あたり110円~120円強程度であろうか。1袋1キロのものだとこれより割安で手に入る。どのみちご飯一杯よりは高くなるが、食べごたえや満足感、正月以外にはあまり食べられることのない特別感などを加味すると妥当といえようか。
餅もさまざまなレシピが存在する、懐の深い食材である。いそべ、あんこ、きなこ、雑煮といった正月定番のもちもDNAが馴染んでいる味として得難いが、食材をアレンジしようとして見た時に、コメと比較にならないほど可能性の広がりを見せる。しょっぱいものから甘いものまで縦横無尽であり、当記事の担当編集は福島の知人から「納豆と大根下ろしがおすすめ」と聞き、試したところ大変美味だったという。
餅はご当地レシピも多彩で面白い。例えば上に触れた福島県では「じゅうねん餅」や超ローカルな「さい餅」などがあるらしい。ネットによってご当地レシピも発掘しやすくなったので、それらを調べてみるのも面白いかもしれない。
今レシピサイト「デリッシュキッチン」の、切り餅を利用したスイーツ32選を見ていて、こうした「何かをまとめた系」の○○選で、32項目は「選」というわりには選抜できておらず多いのではないかと常々思うのだが、いやはやどれも違う方向にうまそうであり、この32レシピをそのまま流用して人気スイーツもち店がオープンできるのではないかとすら夢想される。
参考)デリッシュキッチン 【切り餅アレンジ】スイーツに大変身♪人気の使い切りレシピ32選
この中で特に気になるのはドバイチョコ餅、黒豆ミルク餅、クリームチーズもち、あんバター餅サンドなどであり、片っ端から試してみたく思っている。この飢餓感をシェアしたいのでリンクを貼っておくが、先程から見るレシピ全てどれも食べたくて仕方がないので、ひょっとしたら筆者は現在空腹なのかもしれない。
コメの価格が安定したら、あるいは値上がり後の価格を消費者がある程度納得できるまでの経過が踏まれたら、今ほどの抵抗を感じることなくコメを購入することができるようになるだろう。それまではこの場をしのぐための非コメレシピが家計を守る一助となるはずである。
主食のコメを脱するところが、習慣を変えるようでまず難しいのだが(胃袋や味覚的な本能と結びついているので、ひょっとしたら習慣を変えるより格段に難しいかもしれない)、世には心躍らさせられ、涎分泌させられるレシピが多くある。困難な最初の一歩は、ぜひ魅力的なレシピが放つ「試してみたい欲」によって越えられたい。