確定申告、税理士に頼むといくらかかる?事務所によって「10倍の金額差」が生じるワケ【税理士が解説】Photo:PIXTA

今年も確定申告の季節がやって来ました。今まで自分で申告していたけれど、事業規模が大きくなってきたので税理士に頼もうと思っている人、またはその逆で「まだまだ自分でやれる」と思っている人もいるでしょう。税理士に依頼するメリットとデメリットを整理し、「報酬の相場」について解説します。(税理士 廣岡 実)

フェラーリが経費で落とせない!
それでも税理士に頼むメリットは?

 Aさんは40代の開業医で、クリニックを始めた当初は自分で確定申告を行っていました。しかし、年々売り上げが増加し、収入も2000万円を超えるようになった頃から、税務処理が負担に。そこで、税理士への依頼を決断しました。

「とにかく時間がない。診察、学会参加、スタッフのマネジメントと忙しく、確定申告の作業に時間を割けない」とAさん。しかし、いざ税理士に頼んでみると、経費を厳しく精査され、予想以上に納税額が増加。「税理士に頼んだら税金が高くなったじゃないか!」と最初は後悔しました。

確定申告、税理士に頼むといくらかかる?事務所によって「10倍の金額差」が生じるワケ【税理士が解説】Photo:PIXTA

 車好きのAさんは高級スポーツカーのフェラーリを購入した際も、経費として計上しようと考えていました。しかし、休日にプライベートで使っているだけならば、これは当然、経費にすることはできません。

 法律では経費の定義を「売り上げを獲得するのに貢献した支出」とされており、これが個人事業だとさらに厳しく、「売り上げを『直接』獲得するのに貢献した支出」と規定されます。どうしても経費にしたいのであれば以下の条件が必要です。

1. 業務上の必要性の証明
o フェラーリが診療のための移動手段として本当に必要であること
o 一般的な車ではなくフェラーリを選ぶ合理的な理由があること
2. 広告宣伝費としての正当性
o クリニックのブランディングや集客のために使用していることが明確であること
o 実際に患者の獲得に寄与していることを示す(車体にクリニックの名前やロゴを入れるなど)
3. 実際の使用状況の記録
o 業務での利用割合を示す記録(何回往診に使ったか、どれだけの距離を走行したか)
o プライベート利用が主でないことの証明
o 過去の判例や事例を参考にしつつ、慎重に判断する必要がある

 ただし、たとえこれらをクリアしても、税務署の調査で「業務使用が主ではない」と判断される可能性はあります。

 本題に戻ると、税理士に依頼するということは、法律のとおりに処理することを意味します。要するに「ちゃんと計算してもらう」ということです。

「これまで自分で確定申告をしていた時は、好きなように経費を付けていた。それでも税務署にも何も言われたことはなかった。税理士に頼むと厳しくチェックされて、正直トホホって感じです」とAさん。

 しかし、税理士に依頼したことで得られたメリットもありました。