松本「位置情報の取得は、労務管理にも必要なんだよ。それに、スマホを置き忘れたときもGPSで見つけられるしね。会社のスマホだし、当然でしょ」

労務管理とプライバシーの境界線

生田「でも、ずっとGPS機能をオンにしておくのって、プライバシーの侵害じゃないですか?」

松本「おいおい、そんな大げさなことじゃないだろう。オンにしたり、オフにしたりする方がむしろ面倒じゃないか?」

生田「そういって、本当は出先とかで仕事をサボってるんじゃないかって、僕らを疑っているんじゃないですか?」

松本「そんなつもりはないよ。今まで特にクレームを受けたことはないけどね。そんなに嫌がるのは、何か不都合なことでもあるんじゃないか?」

生田「ないですよ!百歩譲って、仕事中ならまだわかります。でも、勤務時間外まで位置情報を把握されるのは、どう考えてもプライバシー侵害で絶対におかしくないですか?僕は退社するとき、スマホは会社に置いて帰りますから」

松本「なんだって?」

 二人の言い合いは徐々にエスカレート。ちょうど松本へ電話がかかってきたことで一旦終結したが、松本はどうも腹の虫が収まらない。

「自分は悪くない。最近の若い奴は……」そう思う松本だったが、社外の専門家である社労士のカタリーナに相談してみることにした。カタリーナは、歯に衣着せぬ物言いで相談者に愛のムチを入れる、ちょっと風変わりな社労士だ。

GPS機能の位置情報取得、適法な範囲とは

カタリーナ

カタリーナ「こんにちは、社労士のカタリーナです。今日はどんなご相談かしら?」

松本「ちょっと聞いてくださいよ。うちの若手が、会社スマホの使い方に文句を付けてきて……」

 松本は職場であった生田との出来事を、カタリーナに伝えた。

松本「別に、僕が言っていることに問題はないでしょう? 会社のスマホなんだから、使い方にどうこう言うのは、おかしいと思うんですよ。若い世代だからですかねぇ、人権とかプライバシーとか意識がやたら高くて困りますよ」

カタリーナ「そうとも限らないわよ。会社スマホの使い方も一歩間違えれば、違法になるおそれがあるわ」

松本「えっ? GPS機能に限らず、非常時の連絡においても、スマホを常時オンにして持ち歩くのは普通のことだと思いますが」