カタリーナ「あなたは、管理監督者の立場として仕事をしているからそう思うかもしれないけれど、その考えを部下に押し付けるのは問題があるわね」

松本「でも、実際に問題になった奴が過去にいたんですよ。外出や残業が多い割に営業成績も上がらないから、どうもおかしいと思って位置情報を調べたら、パチンコ屋に入り浸っていたというケースがあったんです。位置情報を把握されているとなれば、さすがに変なことはしないでしょう?」

カタリーナ「勤務時間中に会社が社員の位置情報を取得できるとなれば、一定の抑止力にはなるかもしれない。でも、24時間オンにしろというのは、どう考えても行き過ぎよ」

行き過ぎると、会社が社員に損害賠償を命じられることもある

松本「本人にやましいことがなければ、問題ないのでは?」

カタリーナ「そもそも、GPSによる社員の位置情報取得を適法に行うためには、その目的や時間帯などが重要になるわ。つまり、労務管理等を目的として、業務時間中にプライバシー侵害にならないよう配慮しながら行うことがポイントよ」

松本「労務管理のために必要だとは伝えましたが……」

カタリーナ「業務時間中は会社の業務に専念する義務があるから、合理的な目的があって業務時間内に限定して位置情報を把握するなら問題ないわ。でも、あなたは常時GPSをオンにするよう指示したんでしょう?」

松本「えぇ。でも監視するつもりではないですし……」

カタリーナ「たとえ監視する意図がないとしても、休みの日や平日の夜などプライベートな時間まで位置情報が会社に知られる可能性があるとなれば、気が休まらないのも無理のない話だわ。逆の立場だったらどう思う?」

松本「まぁ、確かに気分が良いとは言えませんけれど」

カタリーナ「社員の位置情報を把握する行為が行き過ぎれば、会社が社員に損害賠償を命じられる可能性だってあるのよ」

松本「そんな……じゃぁ、どうすればいいんですか?」

カタリーナ「会社がGPSによる労務管理や業務効率化、緊急時対応のためなど目的を明らかにして、業務時間中に位置情報の取得をすることがある旨を就業規則に定めておくことが一つ。もちろん社員にも周知して、理解を求めることが大事になるわ」

松本「もしかしたら、就業規則に定めがあったかもしれませんが……。つい、自分のやり方を通していました」

カタリーナ「GPSによる位置情報の取得は、適法な範囲で行う限り、後ろめたさを感じる必要はないわ。むしろ規定も設けずに社員に黙って位置情報の取得をしていたことが発覚する方が問題よ。そんなことになれば、大きな反発を招くことは避けられないわ」