松本「コソコソ隠れてするつもりは、私だってありません」

カタリーナ「GPSによって業務時間外における社員の位置情報を把握し、会社に慰謝料の支払いが命じられた裁判例もあるのよ」

松本「え、そうなんですか?」

カタリーナ「たとえ業務時間中であっても、嫌がらせや不当な注意指導を行う目的等で位置情報を利用するのは許されないわ。特定の社員の位置情報のみ取得していた、なんていう私的な利用も当然厳禁よ」

松本「はい……」

カタリーナ「一方で、社員側からGPSの記録を証拠として、残業代を請求したりするケースもあるからGPSも使い方次第ね」

松本「はぁ、そんなケースもあるのですか」

カタリーナ「あとは、あまり口うるさく指図しないこと。外回りの帰りにちょっと寄り道をしたり、一息入れたりすることはあるでしょう? 少し休むことで業務効率が上がることだってあるわけだから、部下を信用して、厳しく管理しすぎないことも大事だと思うわ」

松本「そうですね……。それにしても、かなり部下と言い合ってしまって。違法なプライバシー侵害ではないかと反発してくる部下にはどう接したらよいのでしょう?」

カタリーナ「GPSによる位置情報の取得目的や完全に業務時間内に限られることなど説明したうえで、業務時間外は位置情報アプリを終了させたり、電源自体をOFFにしたりするのを認めることね。職種によっては緊急コールが必要となる場合もあるから、社内ルールをもう一度確認してみて」

松本「はい、そうしてみます」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●GPSによる社員の位置情報取得を適法に行うためには、業務時間中に、就業規則等において利用目的を明確にし、プライバシー侵害にならないよう配慮しながら行うように留意したい。たとえ業務時間内であっても、社員に対する嫌がらせやいじめ等、ハラスメントを目的とする場合は許されない。
●GPSによって社員の位置情報を取得し、これを活用して労務管理を行うことは、会社にとって便利である一方、安易な考えでGPSを活用することはリスクを招くこともある。社員の反発によるリスクを解消するためにも、事前説明をしっかりと行い、理解を求める必要がある。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)