餅は餅屋に任せてしまおう!

 長いつきあいの和田さんとは、性格的な部分のすり合わせの必要はなかったんですね。

古川 そうです。コミュニケーションコストは極めて低かったですね。僕の場合、友だちとやったほうが上手くいくだろうという予感はありました。たとえば、「この画面さぁ……」って話しかけただけで、言いたいことがほとんど伝わるということもよくあります。前提の文脈を共有していれば、話をすることすら必要がない。すると、プロジェクトを進めるスピード感が全然違うんです。

 それは“ものづくり発想”なんですよね。ものづくり同士だから、そのシンクロがすごく重要だと。

古川 僕はよく「直結している」という表現を使っています。サービスと自分の脳、ディレクターとプログラマ、デザイナーが直結していることが大切という意味です。途中で翻訳を挟むとノイズになるんですよね。ものをつくる人が、コードとかデザインまでやったほうがいいと言われる理由はそこです。自分のイメージを伝えるときに言語化しなければいけないけれど、言語で表現できることって全体の1%にすぎないのではないかと思っています。だから、関係者同士が直結できていないと難しい。言葉にするのは非効率とすら思うことがあります。

 それは僕も、ビズリーチを立ち上げる途中で痛感しました。ものづくりをよく理解していない僕が口を挟んでしゃしゃり出ることによって、彼らのイメージの直結を崩すんだろうなって。僕と、エンジニアやデザイナーの仲間は、できることや得意なことがまったく違う。だから、僕が口を出さないほうが物事は進むし、みんなに任せて決めてもらったほうがよっぽどいいものができると。

古川 メンバーにすごい人が入ってきて、自分の想像を軽々と超えたものを提示してくれると、素直に感動しますね。そういうことが当たり前の状態になると、組織はもっとすごいパワーを発揮することになるのではないでしょうか。南さんの本にもありましたけど、プログラマがバグを一瞬で直すとか、半年かけて出来なかったことが1日で出来上がってきたとか、そういうことって結構ありますよね。

 仕事ってそういう感動の連続ですよね。逆に、自分の想像を超えることに出会えなくなったら、自分の成長も止まってしまうと思うんです。いろいろな場で「へえ、すごいな」という気づきを得て、ひとつひとつ学んでいかないと、社長である僕の存在価値はないと思っています。