経営者こそ
生成AIを使いこなそう

 最後の質問です。新浪さんは、生成AIを積極的に使っていると聞きます。上手に使いこなすには、AIに対するプロンプト(指示、質問)がとても重要ですが、これはすなわち「問いを立てる力」そのものであり、先の見えない時代に先頭に立って未来を切り拓いていかねばならない経営者に求められる重要なケイパビリティであると感じます。この能力を高めていくためにも、経営者自身が生成AIをはじめとする最先端のデジタルテクノロジーとどう向き合い、味方にしていくか。新浪さんのお考えをお聞かせください。

 情報量が飛躍的に増大する中、私自身もChatGPTやCopilotといったAIツールを積極的に活用しています。たとえば文章を作成する際、どのようなトーンにしたいのか、AIに何度も指示を出しながら修正を重ねています。

 だいたい3回ぐらい試行錯誤を繰り返すと、自分の意図するものに近づいてきます。最初は時間がかかりますが、繰り返し使っているうちに徐々に使いこなせるようになってきました。見事な回答が返ってきたら、思わず拍手しますね。

 また、先ほどビジネスインテリジェンスの重要性についてお話ししましたが、そうした地政学的な情報収集と分析においても、AIツールの活用は欠かせません。膨大な情報の中から自分自身で取捨選択をすると、知らずしらずのうちにバイアスがかかり、必要な情報を捨ててしまうこともあります。自分が知りたい観点で情報をサマライズしてもらうために、AIにどのようなプロンプトを出すべきか考え、工夫を重ねています。

 AI自体はどんどん利口になりますが、使い始めた頃はそれほど利口ではありません。私はアプリケーションを開発する側には回れませんが、既存のツールをどのように使いこなすかという点では熟達できるし、そこにはクリエイティビティが問われていると思っています。

 こう直せばいいのではないか、こんな使い方ができないかと試行錯誤することで、自分なりのインテリジェンスの形が見えてくるようになりました。これによって、私自身の生産性だけでなく、会社のリスクマネジメントにも少しは寄与できたかもしれません。

 先日、50歳以上の社員向けに生成AIの活用を促す研修を行った際にあらためて気づいたのですが、最近のテクノロジーは非常に使いやすいインターフェースになっています。ですから、自分には使いこなせないという年齢的なバイアスをかける必要はまったくありません。むしろ情報精査が必要な経営者こそ、生成AIを使いこなすべきかもしれない。みずからをアップデートするのに有効なツールである、そうとらえてチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。

 

 

◉聞き手|宮田和美、久世和彦 ◉構成・まとめ|奥田由意、宮田和美
◉撮影|福岡諒嗣(GEKKO)