同じ成分でも全くの別物?
食経験がない“錠剤にした紅麹”

 食経験というのは、一般的に20~25年以上にわたって、一国の全人口相当の人たちが食事の一部として食べてきた実績をいいます。

 青菜をスープの具にして加熱して食べていた経験があったとしても、生の葉を乾燥粉末にしたものをそのまま食べることについては食経験があるとは言えません。

 加熱することと食べる量が同じであることを条件にすれば、加熱済みの葉を冷凍保存してスープの具に使ったり、生の葉を粉末にしたものをスープに加えて煮込んで使ったりすることについてであれば、食経験があると言えるかもしれません。

 食経験は、いわば人体実験の結果ですので、その条件で特に目に見える問題が起きていないことの担保にはなります。

 ただし日本は人類がこれまで経験したことのない高齢化社会に入っています。そのため高齢者での食経験が十分にある食品はあまりなく、今後、いままで発覚していなかった問題が出てくる可能性はあります。

 発がん性のような有害影響も、長い間食べ続けないと明らかにならず、これから判明するものがあるかもしれません。

 今回問題になったサプリメントに使われていた紅麹は、豆腐ようや、豆腐ようを使った郷土料理として親しまれてきたと言われますが、実際にそれをどのくらいの人たちがどの程度食べてきたのかはよくわかりません。それでもそうした料理に含まれる紅麹には、一定程度の食経験があると言えるかもしれません。

 しかし紅麹を錠剤にしたものは食経験がありません。郷土料理に含まれる紅麹菌とサプリメント製造のために培養した紅麹菌が同じかどうかもわかりません。

効くサプリは“薬”と同じなのに…
見落とされがちな「副作用」

 医薬品の場合、効果には副作用が伴うことが多くの人に認識されていると思います。医薬品にかぎらず、食品にも副作用はあります。一般的に健康食品は、効果がほとんど実感できないようなものばかりですが、それらは効果が弱いぶん副作用の心配もあまりなく、安全と言えます。

 食品は効果がないから安全なのです。