主題歌『賜物』をひっくるめて
まるで朝の法要体験
駅には嵩がいて、描いていた絵をのぶに見せる。そこには、あの日、最後の別れとなった、のぶと結太郎が描かれていた。帽子をかぶせてくれた瞬間が永遠に、絵として残った。そこではじめて、こらえてきた涙がこぼれる。「うちがあんたを守っちゃる」と豪語していたのぶが、腕っぷしも気も強くない嵩に助けられたのだ。
嵩はこれまで、自分の家族4人の思い出や、ヤムおじさんと川の中州で語らった思い出などを絵に描いてきた。記憶を絵に定着する嵩の能力が、のぶと結太郎の決定的瞬間も残すことに寄与した。嵩がこれから漫画家、絵本作家として才能を発揮する予感を感じさせる。ここも序章にふさわしいエピソードである。
さらにヤムおじさんが、アンパンを作って朝田家に持ってくる。今度は大人も子どももただかと思ったらお代はちゃんと頂く、だって。ちゃっかりしている。でもアンパンはおいしい。
すっかり覇気のないくらも、あんぱんをかじって笑顔になった。
嵩の絵とヤムおじさんのアンパンがのぶを元気づけたのだ。
言葉と行動の両輪で生きるちからを与えてくれた。
主題歌『賜物』は朝ドラ、あるいは『アンパンマン』を題材にしたドラマらしくないという意見もあるようだ。が、歌詞を聞くととても示唆に富んでいる。「いつか来たる命の終わり」についての歌詞はやなせの言うところの「たったひとりで生まれてきてたったひとりで死んでいく」さみしさと呼応している。
たとえいつか終わるとしても、お父さんに帽子をかぶせてもらった瞬間や、ほかほかのアンパンを食べた瞬間は限りなく輝いているのだ。だから、今日も一日、大切に生きよう。……朝から、こんな哲学的なことを考えるなんて、まるで朝の法要体験のようである。ありがたや。
さて。来週はいよいよ、今田美桜と北村匠海の登場。
今田美桜さんのインタビューも公開中なので、そちらもご覧ください。

