BMWからノウハウを学び
世界トップクラスのメーカーに
同じ頃、中国政府は次世代テクノロジーを有効に活用しようと、電気自動車に対する補助金を導入した。ただし、その対象となるバッテリーは中国製でなければならなかった。そこで、中国における存在感を高めようとしていたBMWは、中国の自動車メーカー、華晨汽車集団およびCATLと提携した。2013年、BMWと華晨汽車集団は中国市場向けの電気自動車「Zinoro」を発売する。BMWのサブコンパクトSUVであるX1のデザインを基本として、CATLのバッテリーが搭載された。

アクシャット・ラティ 著、寺西のぶ子 訳
単三形や単四形の乾電池ならば、製造元がどこであっても基本的に同じ製品ができるが、電気自動車用のバッテリーは、車種ごとに最善の方法で車体に収まるようにカスタムメイドする必要がある。つまり、自動車メーカーのエンジニアはバッテリー会社のエンジニアと協力し、アイデアや規格、プロセスをやりとりしなければならない。CATLは、BMWとともにZinoroの開発に携わる間に、細部へのこだわりや工場から出荷される製品の信頼性向上など、ドイツのエンジニアリング・スキルを習得した。
「BMWから多くを学び、今では世界トップクラスのバッテリーメーカーになりました」
曾毓群は、2017年に開かれたZinoroを祝うイベントでそう語った。「BMWの高い基準と要求のおかげで、私たちは急成長を果たせました」。その2年後、CATLはドイツ初の自動車用バッテリー工場の建設に着工し、尊敬を集めるドイツの自動車業界の先を越した。