ミュージシャンから転身
苦悩の中で気功と出合った

 このように、気前よく気功の腕を振るって見せてくれた前島氏。これも気功の啓発活動の一環であり、「こんなに面白い世界を知らないのは、もったいないですから」と笑う。誰しも気を使いこなせばもっと楽に生きられるのに、と。

 ちなみに前島氏はもともと、横浜界隈で活動していたミュージシャン。10代、20代を演奏技術の習得に費やしていたが、ある時、「テクニック的には劣らないはずなのに、なぜ一流アーティストと同じ音が出せないのか」と疑問を覚えたことが、気功との出合いを後押しする。

「音楽の世界でよく『気持ちを込めろ』なんて言いますよね。だったら、気とか魂というものの正体がもっと理解できれば、トップの人たちと同じ音が出せるようになるのではないかと、ずっと考えていたんです」

 そんなある日、たまたま雑誌で目にした呼吸法にハマり、教室に通ううちに気というものの存在を知った前島氏。鍛錬の末に気功法を身につけ、最初のうちは余興として人を飛ばすようなことをやっていたという。

 ところが30代に突入すると、バブル崩壊の煽りで音楽の仕事が激減。そこで当初は音楽教室の開設を目論んでいたが、すでに気功を習得していたことから、これを仕事にしようと思い立ったのがこの道の始まりだった。

 気とは、人体に普通に存在しているもの。気のコントロールを覚えることは、誰にとっても有意義なはずで、その一助を担いたいというのが「前島気功療法センター」を開いた目的だった。

「街中によく、気功整体を謳う治療院を見かけますよね。あれはインチキでも何でもなくて、普通に整体で体を整えれば、自ずと気の流れも整いますから、嘘は言っていないんですよ」

 気は血液と同じように体の中を流れているもの。その概念を自然に受け止めてみれば、自分自身の体に対する解像度がもっと高まるのではないか。

 であれば、真贋を問うのは野暮というもの。この日の体験を通して、そう思わされたことを付記しておきたい。

触れてないのに「お腹がギュルギュル」「体がすっ飛ぶ」…一流の人が使いこなす「気」の力は本当だった!その場で気功を実践してみせる前島氏 Photo by Shogo Murakami